金銭消費貸借に基づく債権担保の目的のために、債務者所有の建物につき、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に金銭が授受されたとしても右仮登記は有効である。
債権担保のための建物の売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後の金員の授受と右仮登記の効力
民法556条,民法587条,不動産登記法2条
判旨
担保の目的で売買予約をなし、仮登記後に金員を交付する形態の取引は有効であり、予約物件の価格が借入額より相当高価であっても直ちに公序良俗等に反して無効となるものではない。
問題の所在(論点)
1. 担保目的で売買予約を締結し仮登記後に金員を交付する取引形態は有効か。 2. 担保物件の価格が融通額より相当高価である場合、当該契約は無効となるか。
規範
債務の担保を目的として不動産の売買予約を締結し、これに基づく所有権移転の仮登記を経た上で金員を授受する取引形態は法的に許容される。また、担保目的物件の価格が借入額に比して相当高価であるという事実のみをもって、当該売買予約や譲渡の合意が直ちに公序良俗違反(民法90条)等により無効となるものではない。
重要事実
上告人は、被上告人から金員の融通を受けるにあたり、その担保目的で本件不動産について売買予約を締結し、所有権移転の仮登記を完了させた。その後、実際に融通金が交付されたが、上告人は当該売買予約の目的物件の価格が借入額に比して著しく高額であることを理由に、当該契約の有効性や判断遺脱を主張して争った。
事件番号: 昭和37(オ)1421 / 裁判年月日: 昭和38年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約における代金が時価に比して著しく低廉であっても、契約締結当時の諸事情や弁論の全趣旨を総合的に考慮した結果、直ちに当該契約を虚偽表示(通謀虚偽表示)として無効と断定することはできない。 第1 事案の概要:土地所有者Dの父Eが、Dの代理人と称して本件土地を上告人に売却したが、後にDと被上告人と…
あてはめ
まず、売買予約を担保として利用し、仮登記後に金員を交付する実務上の手法は、私的自治の範囲内として適法である。次に、不動産担保においては、融通額よりも相当高価な不動産を担保に供することは実務上稀ではなく、取引の危険負担や将来の清算を前提とする限り、価格の不均衡が直ちに契約を無効ならしめる特段の事情とはいえない。本件においても、価格の多寡に関する具体的な主張判断が原審でなされていない以上、特段の事情は認められない。
結論
本件売買予約及びこれに基づく担保設定は有効であり、物件価格と借入額の乖離を理由とする無効主張は採用できない。
実務上の射程
仮登記担保の有効性を肯定した初期の判例である。現在は仮登記担保契約に関する法律により清算義務等が規律されているが、公序良俗違反や暴利行為の成否を検討する際の基礎的な判断枠組み(単なる価格差のみでは不十分という点)として参照し得る。
事件番号: 昭和35(オ)174 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において権利金の授受や書面上の「地上権」との記載があっても、他の反対証拠によりその法的性質が否定される場合には、地上権設定契約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の先代との間で、土地の利用に関する契約が締結された。その際、作成された証書(乙第2号証)には「地…
事件番号: 昭和39(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。