代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
代物弁済の予約成立の要件
民法482条,民法556条
判旨
代物弁済の予約が成立するためには、消滅すべき債権の数額が当初から一定している必要はないが、少なくとも一定しうる基礎が定められていることを要する。本件では、予約締結時に存在した特定の貸金債権等が消滅すべき債権として認定できるため、予約は有効である。
問題の所在(論点)
代物弁済の予約(民法482条参照)において、消滅すべき債権がどの程度特定されている必要があるか。また、予約完結の方法に関する合意は予約の有効要件となるか。
規範
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によって消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少なくとも「一定しうべき基礎」が定められていることを要する。また、予約完結の方法について特段の合意がなされていない場合であっても、そのことのみをもって当該予約が無効となることはない。
重要事実
上告人(債務者側)と被上告人(債権者側)との間で代物弁済の予約が締結された。上告人は、当該予約において消滅すべき債権が不特定かつ曖昧であり、また予約完結の方法についても合意がないため、予約は無効であると主張した。原審は、予約締結当時に被上告人が主張する合計328万500円の貸金債権と合計130万円の手形貸付債権が存在していた事実を認定し、これらを消滅すべき債権として予約の有効性を認めた。
あてはめ
代物弁済の予約において、消滅すべき債権の額が確定していることは必須ではないが、算定の基礎が必要である。本件では、予約締結時に存在していた具体的な貸金債権および手形貸付債権(合計約458万円)が、代物弁済によって消滅すべき債権であると解される。したがって、消滅すべき債権の「一定しうべき基礎」は定められているといえる。また、予約完結権の行使方法について別段の定めがないことは、契約の成否自体を左右するものではない。
結論
本件代物弁済の予約は有効であり、消滅すべき債権の種類・内容・数額が確定されていないとする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
代物弁済予約の有効要件としての債権の特定性を緩和しつつ、事後的な確定可能性(一定しうべき基礎)を求める実務的な指針を示した。答案上は、予約時点での債権額が未確定なケース(将来債務や変動する債務の担保目的など)において、契約の有効性を論じる際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)94 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
金銭消費貸借に基づく債権担保の目的のために、債務者所有の建物につき、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に金銭が授受されたとしても右仮登記は有効である。
事件番号: 昭和27(オ)911 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産による代物弁済において、債務消滅の効力発生には登記等の具備を要するが、代物弁済契約自体に基づく所有権移転の効力は、特段の事情のない限り契約の成立(または停止条件の成就)によって生じる。 第1 事案の概要:債務者(上告人)と債権者との間で、期限までに債務の弁済がないことを停止条件とする代物弁済…
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【結論(判旨の要点)】不動産の処分防止という主観的な意図があったとしても、登記原因となる合意という実体関係が欠如する以上、抵当権設定登記等は無効である。また、単純・無条件の贈与に基づき所有権保存登記がなされた場合は「履行の終わった」贈与に当たり、もはや撤回できない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し本件不動産…
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。