債権担保の機能を営む代物弁済の予約において、一部弁済があつた場合でも、反対の特約もしくは権利の濫用と認められるような特段の事情がないかぎり、予約完結権の行使を妨げない。
債権担保の機能を営む代物弁済の予約において一部弁済があつた場合と予約完結権の行使
民法482条,民法556条
判旨
債権担保を目的とする代物弁済予約において、債務の一部弁済がなされた場合であっても、反対の特約や権利濫用等の特段の事情がない限り、予約完結権の行使は妨げられない。
問題の所在(論点)
債権担保目的の代物弁済予約において、債務の一部弁済がなされている場合に、債権者が予約完結権を行使することが許されるか。一部弁済が予約完結権行使の障害事由となるか。
規範
債権担保の機能を営む代物弁済の予約において、一部弁済があったにすぎない場合は、①反対の特約がある場合、または②権利の濫用と認められるような特段の事情がある場合を除き、予約完結権の行使を妨げられない。
重要事実
訴外D株式会社は、上告人に対する債権を担保するため、上告人所有の不動産について代物弁済の予約を締結した。その後、債務の一部について弁済がなされたが、全額の弁済には至っていなかった。かかる状況下でD社が代物弁済の予約完結の意思表示を行ったところ、上告人が一部弁済による予約完結権行使の制限を主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
あてはめ
本件では、上告人とD社との間で一部弁済があった場合に予約完結権を行使できないとする「反対の特約」の存在について、上告人による主張立証がなされていない。また、本件の事実関係に照らしても、D社による予約完結権の行使が「権利の濫用」にあたると認めるべき資料も存在しない。したがって、一部弁済がなされた事実はあるものの、完結権行使を妨げる特段の事情は認められないと評価される。
結論
反対の特約や権利濫用といった特段の事情がない限り、一部弁済があっても代物弁済予約完結権の行使は有効である。
実務上の射程
担保目的の代物弁済予約(予約型の譲渡担保等)において、一部弁済による不可分性を認める実務上の指針となる。答案上は、債務者からの「一部返したから登記を移すな」という反論に対し、特約や権利濫用の抗弁がない限り認められないとする構成で用いる。
事件番号: 昭和35(オ)94 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
金銭消費貸借に基づく債権担保の目的のために、債務者所有の建物につき、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に金銭が授受されたとしても右仮登記は有効である。
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
事件番号: 昭和35(オ)174 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において権利金の授受や書面上の「地上権」との記載があっても、他の反対証拠によりその法的性質が否定される場合には、地上権設定契約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の先代との間で、土地の利用に関する契約が締結された。その際、作成された証書(乙第2号証)には「地…