当事者間の契約書に「地上権」の文言が記載された上権利金の授受がなされたからといつて賃貸借契約が地上権設定契約に改められたものとはいえないとされた事例
判旨
賃貸借契約において権利金の授受や書面上の「地上権」との記載があっても、他の反対証拠によりその法的性質が否定される場合には、地上権設定契約の成立を認めることはできない。
問題の所在(論点)
書面上の「地上権」という記載や権利金の授受がある場合に、物権としての地上権設定契約の成立が認められるか。契約の性質決定における事実認定の合理性が問題となった。
規範
契約の法的性質の認定は、書面の文言や金銭の授受といった外形的事実のみならず、諸般の事情を総合考慮し、実質的な合意の内容を確定して判断すべきである。
重要事実
上告人と被上告人の先代との間で、土地の利用に関する契約が締結された。その際、作成された証書(乙第2号証)には「地上権」との記載があり、また契約に際して権利金の授受も行われていた。しかし、原審はこれら地上権の存在を推認させる事実がある一方で、これと矛盾する反対証拠が存在することを重視した。
あてはめ
本件において、書面に「地上権」との記載があり権利金が授受されている事実は、一見すると地上権の成立を示唆する。しかし、裁判所は反対証拠に基づき、これらの事実があってもなお地上権設定契約の存在を認めることは困難であると判断した。権利金の授受が必ずしも地上権設定を意味するとは限らず、賃貸借の要素として評価される余地もある。原審がこれらの具体的事情を総合して地上権の成立を否定した過程には、社会通念に反するような不合理な点はないといえる。
結論
地上権設定契約の存在は認められず、上告人の主張は棄却される。
事件番号: 昭和35(オ)94 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
金銭消費貸借に基づく債権担保の目的のために、債務者所有の建物につき、売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に金銭が授受されたとしても右仮登記は有効である。
実務上の射程
契約書の名称や一部の文言、一時金の授受といった形式的事実に拘束されず、実質的な合意形成過程や反対事実を総合して契約の法的性質(物権か債権か)を判断する実務上の枠組みを示している。答案上は、物権法定主義や賃借権との区別が問題となる場面での事実認定の論法として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和37(オ)1421 / 裁判年月日: 昭和38年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約における代金が時価に比して著しく低廉であっても、契約締結当時の諸事情や弁論の全趣旨を総合的に考慮した結果、直ちに当該契約を虚偽表示(通謀虚偽表示)として無効と断定することはできない。 第1 事案の概要:土地所有者Dの父Eが、Dの代理人と称して本件土地を上告人に売却したが、後にDと被上告人と…
事件番号: 昭和35(オ)312 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の前提となる証拠の取捨判断は、特段の事情がない限り事実審の専権に属する事項であり、これに対する不服は上告理由とならない。 第1 事案の概要:被上告人が本件土地建物を大正4年頃に訴外Dから買い受け、現に所有しているとの事実を一審判決が認定し、原審もこれを引用した。これに対し、上告人らは独自の…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…