馬の登録証、血統証明書、蕃殖証明書が真正に成立したものと信じ、、右記載の血統種別によつて代価を定め、競馬用の馬の蕃殖馬とする目的で牝馬を買い受けたが、前示書類が偽造であり右蕃殖馬として役に立たない場合には、売買契約の要素に錯誤がある。
売買契約につき要素の錯誤ありとされた事例
民法95条
判旨
売買の目的物に備わっているべき性質・属性に誤認がある場合、それが契約の重要な要素に該当するときは、意思表示の錯誤(民法95条)が認められる。
問題の所在(論点)
売買契約において、目的物の属性に関する誤認が民法95条(旧法下の錯誤)にいう「要素の錯誤」に該当し、契約を無効とする根拠となり得るか。
規範
意思表示の目的物の同一性や性質に関して、表意者の認識と客観的事実が一致せず、かつその錯誤が法律行為の主要な部分(要素)に関するものである場合には、錯誤による無効(現行法上の取消し)が認められる。具体的には、その点に錯誤がなければ表意者が意思表示をしなかったであろうと認められ、かつ、一般人もそのような意思表示をしなかったであろうと認められる程度に重要であることを要する。
重要事実
上告人と被上告人との間で、「タマザクラ号」という名称の馬の売買契約が締結された。しかし、当該馬が本来備えているべき属性や同一性に関し、契約の前提となる認識に相違(錯誤)があった。被上告人は、この錯誤に基づき本件売買契約の無効を主張した。
あてはめ
本件売買の対象となった「タマザクラ号」の同一性や性質について、原審が認定した事実関係に基づけば、買主(被上告人)においてその属性を誤認していたことは明らかである。このような目的物の基幹的属性に関する誤認は、契約を締結するか否かの決定的判断材料となるものである。したがって、本件売買の意思表示には、法律行為の主要な部分に瑕疵があるものとして「要素の錯誤」があるといえる。
結論
本件売買には要素の錯誤が認められるため、契約は無効(上告棄却)である。
実務上の射程
目的物の性質や同一性に関する錯誤(いわゆる動機の錯誤が法律行為の内容となった場合を含む)が、契約の「要素」に該当すると判断される典型例である。現行法(令和2年改正後民法95条1項2号・2項)における「基礎とした事情が真実に反する錯誤」の判断枠組みにおいても、その重要性を判断する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和31(オ)107 / 裁判年月日: 昭和32年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、目的物件の過去の事故歴がないこと等を意思表示の内容とした事実が認められない場合には、動機の錯誤による無効は認められない。また、債務不履行を理由とする解除を主張するためには、債務者の責めに帰すべき事由による履行不能の事実が必要である。 第1 事案の概要:上告人(買主)は、本件売買取…