一 控訴審において訴の一部取下が適法になされ、かつ、控訴を棄却する場合には、当該取下部分につき主文で原判の一部取消を言い渡さなくても違法はない。 二 訴訟費用負担、仮執行宣言の担保判定は、裁判所の自由裁量による。
一 控訴審における訴の一部取下と主文に表示することの要否 二 控訴費用負担、仮執行宣言の担保の額の判定権限の性質
民訴法89条,民訴法90条,民訴法91条,民訴法92条,民訴法93条,民訴法186条,民訴法196条,民訴法237条
判旨
契約の相手方が誰であるかという点に関する錯誤について、証拠関係に照らして要素の錯誤に当たらないとした原審の判断を維持した。
問題の所在(論点)
契約の相手方が誰であるかという点に関する認識の齟齬が、民法95条(改正前)にいう「法律行為の要素」の錯誤に該当するか。
規範
意思表示の錯誤が「要素」の錯誤(民法第95条本文)に該当するか否かは、表意者が意思表示の内容の主要な部分について認識と真実との間に不一致があり、かつ、通常の意思決定のプロセスに照らして、その錯誤がなければ意思表示をしなかったであろうと認められる客観的重要性を有するかによって判断される。
重要事実
上告人らは、本件契約の相手方が訴外E産業株式会社であると認識していたが、実際には被上告人の代理人であるDとの間で契約が締結された。上告人らは、契約の相手方の同一性に関する錯誤があったとして、要素の錯誤による契約の無効(改正前民法)を主張した。
あてはめ
原審は、乙第1、2号証の印刷文言等の証拠関係を検討した上で、本件契約の相手方が訴外E産業株式会社であると認定すべき証拠とは認められないと判断した。最高裁も、これらの証拠の取捨選択や事実認定に経験則違反や採証法則違反はなく、要素の錯誤の抗弁を排斥した判断は首肯できるとした。
結論
本件における契約相手方に関する誤認は、法律行為の要素の錯誤には当たらず、契約の無効(抗弁)は認められない。
実務上の射程
契約の主体に関する錯誤については、個別具体的な証拠関係に基づき、それが契約成立の根幹をなす要素といえるかが判断される。答案上は、相手方の属性が契約の目的に照らして不可欠な要素であったかという観点から、あてはめを論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和35(オ)857 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
馬の登録証、血統証明書、蕃殖証明書が真正に成立したものと信じ、、右記載の血統種別によつて代価を定め、競馬用の馬の蕃殖馬とする目的で牝馬を買い受けたが、前示書類が偽造であり右蕃殖馬として役に立たない場合には、売買契約の要素に錯誤がある。