判旨
行政処分については民法の心裡留保に関する規定は適用されず、処分の内容自体に違法がない限り、表示された内容に従って効力を生ずる。
問題の所在(論点)
行政処分(換地処分)において、処分庁の内心的意思と表示内容が異なる場合、民法93条(心裡留保)の規定を適用して処分の効力を否定することができるか。
規範
公共組合が行う換地処分は行政処分としての性質を有する。行政処分については、表示主義が優先されるべきであり、民法93条(心裡留保)の規定は適用されない。したがって、たとえ行為者の内心的意思と表示された行為が異なっていたとしても、処分の内容自体に当然無効と言えるような違法がない限り、行政処分は内心的意思にかかわらず外部に表示されたところに従って効力を生ずる。
重要事実
被上告人は、耕地整理完了後に換地を受ける目的で従前の土地(a番の田)を買い受けた。耕地整理組合は、a番の土地の換地として新地番c番の土地を交付する旨の換地処分を行い、知事の認可・告示を経て登記も完了した。しかし、組合側は、本来c番の土地は「組合地」として売却予定であり、便宜上a番の登記用紙を利用して名義を移す手段として換地処分を行ったに過ぎず、真実a番の換地として交付する意思はなかった。上告人は、この換地処分が心裡留保により無効であると主張した。
あてはめ
本件換地処分において、組合当局者はc番の土地をa番の換地として交付する真意がなかったとされるが、外部に対しては適法な手続きを経て換地処分として表示されている。行政処分の安定性の観点から、民法93条は適用されず、表示された内容が優先される。また、本件処分において内容自体に違法を来すような事情も認められない。したがって、内心的意思がどうあれ、表示された通りc番の土地はa番の換地として被上告人が取得したと解される。
結論
行政処分に民法93条は適用されない。本件換地処分は有効であり、被上告人はc番の土地の所有権を確定的に取得する。
事件番号: 昭和33(オ)576 / 裁判年月日: 昭和35年8月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法を理由として私法上の権利関係の確認や登記抹消を求める訴訟は、行政処分の取消変更を直接求めるものではないため、行政事件訴訟の特例は適用されない。 第1 事案の概要:被上告人が、農地の所有権に基づき、上告人名義の所有権取得登記の抹消登記手続を求めて提訴した。この際、被上告人は請求を基礎付…
実務上の射程
行政行為の有効性(公定力や信頼保護)が争点となる場面で、民法等の私法規定の適用の可否を論ずる際の規範として活用できる。特に意思の欠缺を理由とする取消し・無効主張を排斥する文脈で有用である。
事件番号: 昭和33(オ)784 / 裁判年月日: 昭和35年7月12日 / 結論: 棄却
納税のため物納された土地を大蔵大臣が払い下げる処分は、私法上の売買であつて行政処分ではない。