判旨
行政処分の違法を理由として私法上の権利関係の確認や登記抹消を求める訴訟は、行政処分の取消変更を直接求めるものではないため、行政事件訴訟の特例は適用されない。
問題の所在(論点)
行政処分の違法を攻撃防御の方法として主張し、私法上の登記抹消を求める訴訟について、行政事件訴訟特例法(現・行政事件訴訟法)が適用されるか。
規範
行政訴訟に関する特例法の適用対象は、行政処分の取消しや変更を直接の目的とする訴訟に限られる。単に攻撃防御の方法として処分の違法を主張し、私法上の権利義務関係の存否を争う民事訴訟(形式的当事者訴訟や公法上の当事者訴訟に属さないもの)には、行政事件訴訟の特別の規定は適用されない。
重要事実
被上告人が、農地の所有権に基づき、上告人名義の所有権取得登記の抹消登記手続を求めて提訴した。この際、被上告人は請求を基礎付ける攻撃防御の方法として、原因となった行政処分(農地売渡処分)の違法性を主張した。これに対し上告人は、本訴が行政事件訴訟特例法(当時の現行法に相当)の適用を受けるべきものであるとして、本案前の抗弁を提出した。
あてはめ
被上告人の請求は、あくまで本件農地の所有権に基づく「抹消登記手続」という私法上の請求である。請求の当否を判断する過程で売渡処分の違法性が主張されているが、これは判決の前提となる攻撃防御の方法にすぎない。訴訟の主文において行政処分の取消しや変更を求めるものではないことが記録上明白であるため、公法上の処分の効力を直接争う訴訟とは性質を異にする。
結論
本件訴訟に行政事件訴訟特例法は適用されない。したがって、同法に基づく本案前の抗弁を排斥した原審の判断は正当である。
実務上の射程
行政処分の存在を前提としつつ、その無効・違法を理由として民事上の権利を主張する「公定力の限界」に関する事案。処分が無効であれば民事訴訟で解決可能だが、単なる取消事由に留まる場合は、公定力により民事裁判所は処分の効力を否定できない(取消訴訟排他的管轄)。本判決は、訴訟の性質が民事上の請求である限り、訴訟手続自体は民事訴訟法に従うことを示したものである。
事件番号: 昭和27(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が「民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が最高裁判所に対し上告を提起したが、その上告理由(論旨)が、当時の「民事上告事件の審判の特例に関する法律」1条1号から3号までのいずれ…
事件番号: 昭和39(オ)82 / 裁判年月日: 昭和39年11月19日 / 結論: その他
一 自作農創設特別措置法第三条に基づく農地の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得については、民法第一七七条の適用がある。 二 自作農創設特別措置法第一一条は、農地の買収計画の樹立以降買収の効果発生までに権利関係の変動があつた場合において、その農地の所有者などの承継人に対してのみ農地の買収手続…
事件番号: 昭和36(オ)65 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の先行段階である買収計画に対する異議申立の却下決定通知が不適法であっても、その後の買収処分が当然無効になるわけではなく、取消原因にとどまる。また、受領拒絶は令書の交付ができない場合に該当し、公告をもって代えることができる。 第1 事案の概要:上告人は、未墾地買収計画に対する異議申立の却下決…