納税のため物納された土地を大蔵大臣が払い下げる処分は、私法上の売買であつて行政処分ではない。
納税のため物納された土地の払下処分の性質。
行政事件訴訟特例法1条
判旨
国有普通財産の払下げは、行政庁による許可の形式を採るものであっても、その実体は私法上の売買契約としての性質を有する。また、当該払下げにより第三者の借地権が当然に侵害されるものではなく、対抗要件の問題として解決されるべきである。
問題の所在(論点)
国有普通財産の払下げが行政処分に該当するか。また、払下げによって第三者の借地権が侵害され、憲法29条に違反することになるか。
規範
国有普通財産の払下げは、行政上の目的のために直接公用に供されるものではない財産の処分であるから、対等な当事者間で行われる私法上の売買契約と解される。申請に対する許可という公法的な形式を採る場合であっても、その法律上の性質に影響を及ぼすものではない。
重要事実
上告人は、物納された国有地について借地権を有すると主張していた。国が当該土地を第三者(若狭)に払い下げた(売却した)ことに対し、上告人は、当該払下げが行政処分であることを前提に、自身の財産権を侵害する違法なものであるとして争った。
あてはめ
まず、国有普通財産の払下げは、売渡申請書の提出とこれに対する払下許可という形式を採っている。しかし、これは契約の成立過程を示すに過ぎず、実質的には私法上の売買であると評価される。次に、上告人の主張する借地権の侵害については、所有権の移転に伴う対抗力の問題にすぎない。借地権が建物保護に関する法律等によって対抗要件を具備しているならば、所有者が国から第三者に代わっても借地権は維持される。したがって、払下げ行為自体が直接借地権を侵害する公権力の行使とはいえない。
結論
国有普通財産の払下げは私法上の売買であり、行政処分には当たらない。また、払下げにより直ちに借地権が侵害されるものではないため、憲法29条違反の主張も認められない。
実務上の射程
行政庁の行為が「行政処分」か「私経済上の行為」かを区別する際のリーディングケース。普通財産の処分は原則として私法上の行為であり、その取消しを求めて抗告訴訟を提起することはできないという論理構成に用いる。
事件番号: 昭和33(オ)576 / 裁判年月日: 昭和35年8月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法を理由として私法上の権利関係の確認や登記抹消を求める訴訟は、行政処分の取消変更を直接求めるものではないため、行政事件訴訟の特例は適用されない。 第1 事案の概要:被上告人が、農地の所有権に基づき、上告人名義の所有権取得登記の抹消登記手続を求めて提訴した。この際、被上告人は請求を基礎付…
事件番号: 昭和33(オ)214 / 裁判年月日: 昭和34年1月8日 / 結論: 棄却
登記簿上の所有名義人は、反証のない限り、右不動産を所有するものと推定すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)800 / 裁判年月日: 昭和35年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人に信用を得させる目的で、単に見せるためだけに登記権利書と印鑑を貸与したに過ぎない場合、何ら代理権を授与したものとは認められず、表見代理の成立も否定される。 第1 事案の概要:被上告人は、訴外Dから「E株式会社に対する信用を得るために、単に同会社に見せるだけ」という目的で、本件土地の登記権利書と…