登記簿上の所有名義人は、反証のない限り、右不動産を所有するものと推定すべきである。
登記と事実上の推定。
民法177条,民訴法185条
判旨
不動産の所有権登記名義人は、特段の事情がない限り、当該不動産の所有者であると事実上推定されるため、これを争う者は、自己の主張事実を立証して右推定を覆す責任を負う。
問題の所在(論点)
不動産の登記名義が存在する場合に、その名義人が所有者であると推定されるか。また、その推定を覆すための立証責任は誰が負うか。
規範
不動産について所有権登記名義が存在する場合、その登記名義人は当該不動産の所有者であると事実上推定される。この推定は、登記原因となる物権変動や債権行為が有効に存在することまでを当然に推定するものではないが、登記名義人が真実の所有者でないと主張する相手方は、その主張事実を立証することによって右の推定を覆す必要がある。
重要事実
被上告人が所有権登記名義人となっている山林三筆について、上告人らは、被上告人名義の登記は不知の間に無断でなされたものであると主張した。上告人らは、本件山林を含む土地は元々上告人らの先代が訴外の第三者から買い受けて所有していたものであるとして、被上告人に対し所有権を主張した事案である。
事件番号: 昭和33(オ)251 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
病身の夫が家族との不和と療養の関係からさして遠方でない土地に別居中、妻が無断で夫の印章を偽造し、夫の代理名義で夫所有の土地家屋を代金三一〇万円で売却した場合、交渉の行われた場所が当該の家屋であり、家族の収入は妻名義でなす貸間収入で賄われており、成人した子供達が交渉の際同席する等、一応妻に代理権があると信じさせるような事…
あてはめ
本件山林が被上告人の所有名義に登記されていることは当事者間に争いがない。この事実により、一応本件山林は被上告人の所有に属するものと推定される。これに対し、上告人らは先代の買受け事実等を主張して右推定の覆滅を試みたが、提出された証拠を総合しても、登記がほしいままになされたとの主張や自己の所有を肯認するに足りる立証がなされていない。したがって、登記に基づく所有権の推定を覆すことはできないと判断される。
結論
被上告人が所有権者であるとの推定は維持されるため、上告人らの請求は理由がないとして棄却される。
実務上の射程
登記の権利推定力(事実上の推定)を確認した基礎的判例である。訴訟上、登記名義人は所有権の存在について一応の立証を免れ、相手方が登記の無効原因(不実の登記であること等)を立証すべき責任(実質的な覆滅責任)を負うことを示す。答案では「登記には権利推定力がある」という命題の根拠として利用する。
事件番号: 昭和34(オ)246 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の存在から実体法上の権利関係が推認されるという登記の推定力を認めるとともに、二段の推定に関し、印影が本人の印章によるものであれば、特段の事情がない限り文書全体の真正成立が推定されるとした。 第1 事案の概要:被上告人の父Dは、上告人の父Eの負債整理の際、貸金担保として土地等を被上告人名義…
事件番号: 昭和34(オ)44 / 裁判年月日: 昭和38年3月12日 / 結論: 棄却
所有権移転登記の共有名義人を被告として当該登記の抹消登記手続を求める訴訟は、固有必要的共同訴竈訟と解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)169 / 裁判年月日: 昭和34年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を元の所有者から譲り受けたと偽って第三者に譲渡した者は、真の譲受人に対して民法177条の「第三者」に該当しない。無権利者から不動産を譲り受けた者、およびその転得者は、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者に当たらないためである。 第1 事案の概要:本件宅地について、被上告人は元所有者Dから…
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。