もと国有の係争山林が甲と乙ほか四名の共同名義で払い下げられ、右合計六名の名義で共有権保存登記がなされたが、係争山林は、さきに甲の先代で払下を受けたD宮およびEの境内地を囲繞し、あわせて一つの神域を形成している関係にあるにかかわらず、その払下出願は、甲のほか右境内地の所有者でない乙ほか四名が加わつて、単にD宮の末社たるEだけの信徒総代という名義でしたにすぎない等判示のような事情があるときは、係争山林の払下および登記が前記六名の名義でなされたことを主たる根拠として、その払下が右六名全員を縁故者としてなされたものと認めることは、審理不尽理由不備の違法がある。
いわゆる縁故者として国有山林の払下を受けた者の認定に審理不尽理由不備の違法があるとされた事例。
民訴法395条6号
判旨
寺社の境内地等について、代表者名義や他人の氏名を用いて氏子総代等のために払い下げがなされた場合であっても、実質的な買受人が当該寺社(宗教団体)であると認められるときは、その所有権は当該寺社に帰属する。また、登記名義が個人であっても、当該団体が実質的権利者として処分権限を有していると認められる場合には、その登記は公序良俗に反するものではない。
問題の所在(論点)
宗教団体が土地を買い受けるに際し、個人名義を借りて払い下げを受けた場合、土地の所有権は名義人と実質的買受人のいずれに帰属するか。また、このような名義貸しによる登記は公序良俗に反し無効となるか。
規範
不動産の買受けにおいて、形式的な名義人と実質的な買受人が異なる場合、真実の買受人が誰であるかは、代金の支払者、物件の管理・収益の状況、および買受けに至る経緯等の諸般の事情を総合的に考慮して判断される。実質的な所有権の帰属は、これらの実態に即して決定されるべきであり、名義人が単なる代理人や信託的譲受人にすぎない場合には、実質的権利者が所有権を取得する。
重要事実
事件番号: 昭和37(オ)745 / 裁判年月日: 昭和39年2月6日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人がこれに明認方法を施さないうちにこれを伐採した場合、右買受人は、当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠点を主張しうべき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつて対抗できない。
本件土地はもともと神社の境内地であったが、明治初期の「上知令」により官有地とされた。その後、昭和22年に実質的には神社の境内地・参道として使用し続ける目的で、国から払い下げを受けることとなった。その際、便宜上、氏子総代等の個人名義で払い下げの申請が行われ、代金も氏子らから集められた寄付金(神社の浄財)によって賄われた。登記名義は個人のままであったが、土地の管理・利用は一貫して神社(本件原告)が行っていた。これに対し、被告(名義人の相続人ら)が所有権を主張して争った事案である。
あてはめ
本件における土地の払い下げは、形式上は個人名義で行われているが、その実質は神社の将来の活動拠点である境内地を確保するためのものであった。代金の原資は氏子による寄付金であり、個人の私財ではない。また、払い下げ後の管理・収益の態様を見ても、神社が主体となって神事や参道として利用しており、名義人が自己の所有物として排他的に利用していた事実は認められない。したがって、本件における個人名義人は、神社のための「代行者」または「信託的譲受人」にすぎず、実質的な買受人は神社であると認められる。このような実態に基づく権利帰属を認めることは、公序良俗に反するものではない。
結論
本件土地の実質的買受人は原告(神社)であり、所有権は原告に帰属する。登記名義が個人であっても、実態に即した所有権の移転を認めるのが相当である。
実務上の射程
本判決は、法人格取得前の宗教団体や地縁団体が、便宜上代表者等の個人名義で財産を取得した場合の権利帰属を判断する際のリーディングケースとなる。答案上は、登記名義と実質的権利者が異なる場合の「所有権の帰属」という論点において、代金負担や管理状況といった具体的要素を総合考慮する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)86 / 裁判年月日: 昭和37年3月2日 / 結論: 棄却
山林の入口、山林内路傍、山林頂上の三ケ所の立木に、幅約二〇糎、長さ約四五糎、厚さ約二糎の板に、「a山林六町七反八畝歩は名義人において買受けたから伐採を禁ずる」旨記載した立札を釘で打付けたこと、右山林は俗にbと呼ばれていることの事実があるときは、右立札による公示は、右山林内の立木所有権の明認方法として有効である。
事件番号: 昭和32(オ)325 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする。
事件番号: 昭和35(オ)900 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
山林を買受け、未登記のままこれに檜等を植栽した者が、その後特に地上立木を除外することなくいわゆる二重売買を受け、所有権移転登記を経た者に対し、その植栽した立木の所有権を主張するためにはこれを公示する対抗要件を必要とする。