書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認むべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなく、その書証を排斥するのは理由不備の違法を免れない。
書証を排斥するについて理由不備の違法があるとされた事例
民訴法185条,民訴法395条6号
判旨
公的委員会の議事録等の書証について、作成責任者たる委員長や書記が不自然な供述に基づき内容を否定したとしても、他の記載部分との整合性を欠く場合は、当該書証の証明力を否定することは許されない。
問題の所在(論点)
作成責任者(委員長・書記)による自己の作成した議事録内容の否定という証言に基づき、書証の証明力を全面的に否定する認定が、経験則・論理則に照らして許されるか。
規範
事実認定における自由心証主義(民事訴訟法247条)は、論理則・経験則に反してはならない。特に、公的性格を有する機関の作成した議事録等の書証について、その作成責任を負うべき地位にある者の証言に基づき内容を否定する場合、当該証言が著しく不合理であるときは、当該書証の証明力を否定する認定は審理不尽・理由不備として破棄を免れない。
重要事実
上告人は、農地の耕作権移動(小作契約の合意解除)を立証するため、農地委員会の承認決議を記した書証(甲14、15号証)を提出した。原審は、当時の委員長Eおよび書記Fの「上告人の依頼を断りきれず内容不明のまま証明した」という証言に基づき、当該決議は存在せず、移動の事実は証明されないと判断した。しかし、当該書証には本件以外の農地変動も併記されており、E・Fは他部分については否定していなかった。
事件番号: 昭和43(オ)1267 / 裁判年月日: 昭和44年6月24日 / 結論: その他
判示のように、当事者の主張が法律構成において欠けるところがある場合においても、その主張事実を合理的に解釈するならば、正当な主張として構成することができ、当事者の提出した資料のうちにもこれを裏付けうるものがあるときは、当事者にその主張の趣旨を明らかにさせたうえ、これに対する当事者双方の主張立証を尽くさせるべきであり、これ…
あてはめ
まず、Eは委員長、Fは書記であり、議事録作成の公的責任を負う立場にある。それにもかかわらず「内容不明のまま証明した」とする供述は到底納得し難い。また、当該議事録には本件農地だけでなく他者の農地変動も記載されているが、両証人は他者分については否定供述をしていない。このような矛盾がある状況下で、不自然な供述のみを根拠に書証の証明力を否定し、農地移動の事実を認めないとする原判決の推認は、経験則に反し首肯し得ない。
結論
原判決には審理不尽ないし理由不備の違法がある。事実認定の根拠となる証言が著しく不合理であるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
書証(特に公的な議事録等)の証明力を争う場面で活用できる。作成者本人が「実は適当に作った」と証言した場合でも、その地位や他部分との整合性から供述の信用性を弾劾し、書証の証拠価値を維持させるためのロジックとして有用である。
事件番号: 昭和33(オ)587 / 裁判年月日: 昭和35年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の所有権移転に知事の許可が必要な場合でも、競落許可決定による所有権取得を主張したときは、当然に知事の許可があった旨の主張を含むと解される。 第1 事案の概要:被上告人は、農地の所有権を競落(現在の競却)によって取得したと主張し、所有権に基づく請求を行った。これに対し上告人側は、被上告人が農地法…
事件番号: 昭和30(オ)507 / 裁判年月日: 昭和32年10月31日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認めるべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなくその書証を排斥するのは、理由不備の違法を免れない。