判旨
農地の所有権移転に知事の許可が必要な場合でも、競落許可決定による所有権取得を主張したときは、当然に知事の許可があった旨の主張を含むと解される。
問題の所在(論点)
農地法上の許可が所有権移転の効力発生要件である場合において、競落許可決定による所有権取得の主張があるときに、知事の許可があった旨の主張がなされたと解することができるか。弁論主義における「主張」の範囲が問題となる。
規範
1.農地の所有権移転を主張する者は、原則として、移転行為に加えて農地法所定の知事の許可があった事実についても主張立証責任を負う。2.もっとも、裁判所が知事の許可を確認した上で競落許可決定を行うことが顕著な事実である場合には、競落許可決定があった旨の主張に許可の主張が包含されていると解するのが相当である。
重要事実
被上告人は、農地の所有権を競落(現在の競却)によって取得したと主張し、所有権に基づく請求を行った。これに対し上告人側は、被上告人が農地法3条に基づく知事の許可があったことを明示的に主張していないにもかかわらず、原審が許可があった事実を認定して請求を認容したのは、弁論主義に反し当事者の申し立てない事実に基づいた違法があると主張した。
あてはめ
農地法に基づく知事の許可は所有権移転の効力発生要件であるが、実務上、裁判所は知事の許可があることを確認した上でなければ競落許可決定をしない(顕著な事実)。したがって、被上告人が「競落許可決定により所有権を取得した」と主張したことは、その全趣旨に照らせば、前提となる知事の許可があった事実も含めて主張していると解される。よって、原審が許可の事実を認定したことは、当事者の主張しない事実を採用したことにはならない。
結論
競落許可決定による所有権取得の主張には、知事の許可の主張が含まれる。したがって、弁論主義違反の違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和29(オ)585 / 裁判年月日: 昭和32年6月13日 / 結論: 棄却
現にマオラン麻の栽培がなされている土地であつても、その土地が、埋立工事によつて工場敷地に造成し周囲に塀をめぐらし、その中に工場を建設して工場経営をしている土地の一部休閑地であつて、客観的に工場用地としての要件を具備し本来工場経営のため使用する目的が明らかな土地である場合には、農地調整法(昭和二〇年法律第六四号による改正…
実務上の射程
弁論主義における「主張」の解釈に関する判例である。特定の法的効果を発生させるために不可欠な前提事実が、実務上の運用や他の主要事実から当然に導き出される場合、明示的な文言がなくとも「主張の全趣旨」として包含されると解する余地を示す。答案上は、主張の有無を厳密に解するのではなく、実質的な当事者の意思や裁判上の顕著な事実と関連付けて合理的に解釈する際の手法として援用できる。
事件番号: 昭和35(オ)293 / 裁判年月日: 昭和37年3月1日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認むべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなく、その書証を排斥するのは理由不備の違法を免れない。
事件番号: 昭和28(オ)931 / 裁判年月日: 昭和30年9月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の土地が旧農地調整法上の「農地」に該当するか否かは、土地取得の動機、目的、将来の用途、沿革など、主観的および客観的諸般の事情を総合して判定すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争土地について旧農地調整法上の農地であることを前提に、賃貸借の承継等を主張した。原審は、当該土地の取得目的…
事件番号: 昭和25(オ)287 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する取消訴訟において、出訴期間の規定は公法上の法律関係を早期に確定させるための強行規定であり、処分の実体的な違法性の有無や行政庁による訴訟提起の要請にかかわらず適用される。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分について、病者が不在地主にならない保障に反す…