判旨
農地の賃借権設定において、行政庁の許可等が有効要件とされている場合には、賃借権の存在を主張する者がその有効要件の具備を主張・立証する責任を負う。
問題の所在(論点)
農地の賃借権設定について行政庁の許可(農地調整法4条)が有効要件とされている場合、当該許可の存在についての主張・立証責任は、賃借権の有効を主張する側とこれを否定する側のいずれが負うべきか。
規範
法律行為の効力発生に行政庁の許可や承認が条件として付されている場合(有効要件)、その法律行為に基づく権利の存在を主張する当事者は、当該有効要件が具備されていること(許可等の存在)を主張・立証しなければならない。
重要事実
上告人は、調停によって本件土地(乙地)につき新たに賃借権が設定されたと主張し、その権利を争った。しかし、当時の農地調整法4条によれば、農地の賃借権設定には行政庁の許可または承認が必要とされていた。上告人は賃借権の成立を主張したが、記録上、右許可等の有効要件を具備したことを確証するに足りる証拠は存在しなかった。
あてはめ
農地調整法4条に基づく許可等は賃借権設定の有効要件である。したがって、民事訴訟における立証責任の分配原則に従えば、権利の発生を主張する者がその発生要件の具備を立証すべきである。本件において、賃借権の存在を主張する上告人は、その有効要件である許可等の具備を立証すべき立場にあるが、提出された証拠(Dの証言等)ではこれを確証できない。よって、有効な賃借権の成立は認められない。
結論
賃借権の存在を主張する当事者が有効要件(許可等)の具備を主張・立証すべきであり、本件ではその立証がない以上、賃借権の成立は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和41(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和42年3月23日 / 結論: 棄却
農地法第六条第五項は当該農地の耕作者に対し耕作権原を附与した規定と解すべきものではない。
本判決は農地法(旧農地調整法)下の事案であるが、現行の農地法3条に基づく許可が必要な農地売買や賃貸借の事案においても、権利発生を主張する側が許可の存在を立証すべきという立証責任の一般原則を確認したものとして、実務上極めて重要な射程を有する。
事件番号: 昭和35(オ)293 / 裁判年月日: 昭和37年3月1日 / 結論: 破棄差戻
書証の記載およびその体裁から、特段の事情のない限り、その記載どおりの事実を認むべきである場合に、なんら首肯するに足る理由を示すことなく、その書証を排斥するのは理由不備の違法を免れない。