債務者が債権者のために不動産につき根抵当権を設定するとともに、担保として商品を提供している等判示のような事情がある場合に、第三者が債権者と右商品を債務者のために返還する約定のもとに債務者のために債権者に対し被担保債権を弁済したときは、特段の事情がない限り右抵当権は消滅するものと解すべきであつて、右第三者が右不動産に対する後順位抵当権者であつても法定代位は生じない。
不動産の後順位抵当権者が債務者のために先順位抵当権者に対してなした弁済に法定代位が認められないとされた事例
民法500条,民法501条
判旨
第三者が債務者の担保物返還を目的として弁済を行った場合、特段の事情がない限り、弁済によって当該担保は解除され、同時に当該債務に関する他の担保権(不動産担保等)も消滅するため、法定代位は生じない。
問題の所在(論点)
特定の担保物の返還を目的として第三者弁済がなされた場合に、当該弁済が後順位抵当権者による正当な利益を有する弁済として、他の担保権(根抵当権)について法定代位を生じさせるか。
規範
第三者が弁済を行うにあたり、特定の担保物の返還を受けることを目的として交渉し、債権者がこれに応じて弁済を受けたという関係がある場合には、特段の事情のない限り、当該弁済は他の不動産担保等の維持を前提とした後順位抵当権者としての弁済ではなく、当該担保の解除に対応するものと解すべきである。この場合、弁済された債務に関する担保権は消滅し、法定代位による権利行使の余地はない。
重要事実
債務者甲は、上告銀行に対し、根抵当権による担保のほか、特定の債務(A〜C)について商品(鋼製帯コーナー等)を担保提供していた。後順位抵当権者である被上告会社は、甲が右商品を取り戻して操業できるよう援助するため、銀行に対し「債務A〜Cを弁済する代わりに商品を返還すること」を交渉し、銀行もこれを承諾した。その後、被上告会社は合計約467万円を第三者弁済し、商品の返還がなされた。被上告会社は、この弁済により後順位抵当権者として法定代位(民法500条)し、上告銀行の先順位根抵当権を行使できると主張した。
あてはめ
本件弁済は、甲が商品担保の返還を受けて操業することを援助する目的で、銀行との交渉・合意に基づいて行われたものである。このような経緯からすれば、本件弁済は「商品担保の解除」に対応するものであり、弁済によって当該債務に関する不動産担保も消滅したと解するのが自然である。原審のように、本件弁済が商品返還とは無関係に後順位抵当権者の地位に基づくものと認定するためには、そのような特段の担保契約が存在した等の事情が必要であるが、本件では認められない。したがって、法定代位の発生を認めた原審の判断には理由不備がある。
結論
商品担保の返還を目的とした弁済により当該債務の担保権は消滅するため、法定代位は成立しない。原判決を破棄し、差戻す。
実務上の射程
代位の正当な利益を有する者(民法500条)による弁済であっても、弁済の目的が特定の担保解除に限定されている場合には、他の担保権への代位が否定される。答案上、代位の要件を検討する際、弁済の趣旨(特定の担保関係の解消目的か否か)を事実認定から評価する際の指針となる。
事件番号: 昭和34(オ)1254 / 裁判年月日: 昭和37年11月27日 / 結論: 破棄差戻
右受任者は、その受任義務が自己の責に帰すべき事由により履行不能になつたものとして、特段の事情がない限り、手形額面金額相当の損害賠償義務を負う。