判旨
手形裏書人が振出人の原因関係上の債務を保証する趣旨で裏書をしたと認められる場合には、手形法上の責任とは別に、民法上の保証債務が成立する。手形振出の事情を知り、保証を依頼されて裏書をなした等の特段の事情があるときは、原因債務の保証の意思表示があったと認定できる。
問題の所在(論点)
手形裏書行為によって、裏書人が手形法上の責任(手形法15条1項等)を負うだけでなく、手形の振出人が負担している原因関係上の債務(民法446条)を保証したと認められるか。
規範
手形裏書人の償還義務は手形行為により原因関係と独立して発生するものであり、裏書のみをもって当然に振出人の原因債務を保証したものとはいえない。しかし、第三者が振出の原因となった事情を知り、振出人の原因債務を保証する趣旨で裏書をしたと認められる特段の事情がある場合には、民法上の保証債務の成立を認めることができる。
重要事実
上告人とDは漁網売買契約を解除し、Dが上告人に対し代金返還債務を負ったが、Dは現金支払が困難なため手形を振り出した。その際、上告人の代理人がDに対し、振出人Dのみでは不十分として保証人を立てるよう要求した。Dは実弟の被上告人B1、知人のB2、およびFに対し、手形振出の事情を説明した上で、保証の趣旨で裏書を依頼し、各人はこれに応じて順次裏書をなした。
あてはめ
Dが代金返還債務の支払方法として本件手形を振り出した際、債権者側から保証人を立てるよう要求があったこと、裏書人らがDから振出の事情(返還債務の存在)の説明を受けたこと、および「保証の趣旨」で裏書を依頼されこれに応諾した事実に照らせば、特段の事情がない限り、裏書人らは手形責任の負担にとどまらず、Dの上告人に対する代金返還債務を保証する意思を有していたと解するのが相当である。
結論
裏書人において、振出人の原因関係上の債務を保証する趣旨で裏書をなしたものと認めるのが相当である。したがって、保証債務の成立を否定した原判決には審理不尽・理由不備の違法があり、破棄を免れない。
実務上の射程
手形行為(裏書)を媒介として民法上の保証意思を認定する際の判断枠組みを示したものである。答案上は、原因債務の保証を請求する際に、証拠上「保証の趣旨」があったといえるか否かのあてはめで、債権者からの保証要求の有無や、裏書人に対する事情説明の有無を重視する指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)688 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
約束手形の第二裏書人丙が振出人甲の手形債務を保証する趣旨でその手形を第一裏書人乙に戻裏書したときは、乙は丙に対して償還を請求することができると解すべきである。