約束手形の所持人とその前者に対する裏書人との間に存する金銭債務関係は、振出人の手形上の責任に影響しない。
約束手形の所持人とその前者に対する裏書人との間の債務関係と振出人の手形上の責任
手形法17条
判旨
約束手形の所持人とその裏書人との間に存在する金銭債務関係の成否や内容は、振出人の手形上の責任に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
手形所持人とその直接の前手(裏書人)との間の原因関係(手形割引金の支払状況等)の存否が、振出人の手形上の責任(手形法77条1項1号、28条)に影響を及ぼすか。
規範
手形行為は原因関係から独立しており、手形の所持人とその前者の裏書人との間に存する金銭債務関係の如何は、原則として振出人の手形上の責任に消長を及ぼさない。
重要事実
約束手形の所持人(被上告人)が、裏書人(D)に対し、手形割引金の一部として約30万円を交付し、残額についても割引金の対価に相当する処理をしていた事案。振出人(上告人)は、所持人と裏書人間における割引金の授受の不備等を理由に、自己の手形債務を否定しようとして上告した。
あてはめ
手形は流通を目的とする有価証券であり、原因関係から切り離された抽象的な債権を表章する。本件において、被上告人がDから裏書譲渡を受けるに際し、割引金の一部交付や残額の清算処理を行っていることが認定されている。このような所持人と裏書人間の内部的な決済状況は、手形債務の発生自体を左右するものではなく、振出人である上告人がこれを援用して支払を拒むことはできない。
結論
手形所持人と前者の裏書人との間の債務関係の如何にかかわらず、振出人は手形上の責任を免れないため、上告を棄却する。
実務上の射程
手形の抽象性を再確認する判例。振出人が「所持人と裏書人の間に原因関係がない(または対価が支払われていない)」ことを理由に抗弁を主張しても、それは人的抗弁の対抗制限(手形法17条)以前の問題として、そもそも振出人の責任に関係がないことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和36(オ)996 / 裁判年月日: 昭和37年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形上の権利が成立するためには、手形への署名および記名押印だけでなく、振出人または裏書人の裏書譲渡の意思に基づく受取人への交付が必要である。 第1 事案の概要:D薬品株式会社(以下「D社」)が所持していた本件手形2通が、被上告会社(手形債権の主張者)の手に渡った。上告人(手形債務者)側は、D社に裏…