判旨
事実審において主張立証されなかった事実は、上告審において新たに主張することは許されず、裁判所がそれに基づき判断しなくても違法ではない。
問題の所在(論点)
事実審(原審)において全く主張立証されていなかった事実を、上告審において新たに主張し、原審の判断の違法を問うことができるか。
規範
上告審は事後審であり、原則として原審の確定した事実に基づいて法律的判断を行う。したがって、原審において主張立証がなされていない新たな事実は上告理由とはならず、また原審がそれについて判断しなかったとしても審理不尽等の違法を構成しない。
重要事実
上告人は、本件強制執行の債務名義である公正証書記載の債務が、通謀虚偽表示(民法94条1項)や錯誤(同法95条)に基づく無効なものであると主張し、また印鑑証明の日付に関する不備を指摘して上告を申し立てた。しかし、これらの事実は原審(控訴審)までの手続において全く主張立証されておらず、上告段階で初めて提出されたものであった。
あてはめ
本件において、通謀虚偽表示や錯誤に関する事実は、原審において全く主張立証されなかった。裁判所が当事者の主張していない事実を基礎に判断を下すことは弁論主義に反するため、原審がこれらを判断しなかったことに違法はない。また、印鑑証明の日付に関する事実についても同様に原審での主張がなく、当審において新たに主張することは許されない。適法に成立が認められた公正証書を証拠資料とした原審の判断に何ら違法は見当たらない。
結論
原審で主張されなかった事実を上告審で主張することは許されず、上告は棄却される。
実務上の射程
弁論主義および上告審の事後審的性格を確認する裁判例。答案上は、主張立証の責任を尽くさなかった当事者が、上告審で新たな事実を提示して原審の判断を覆すことはできないという「適時提出主義」や「法律審の性質」を論じる際、手続き的安定性の観点から引用可能である。
事件番号: 昭和32(オ)381 / 裁判年月日: 昭和34年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求異議の訴えにおける異議の事由が、前訴において当然に主張し得たものである場合には、これを前訴で主張せず別途本訴で主張することは許されない。この理は、執行力の排除を求める債務名義が判決であるか公正証書であるかによって差異を生じない。 第1 事案の概要:上告人らは、債務名義の執行力排除を求めて請求異…