判旨
口頭弁論期日に一方の当事者が欠席した場合であっても、出頭した相手方が第一審における当事者双方の主張立証を陳述したと認められるときは、裁判所はこれに基づき裁判をすることができる。
問題の所在(論点)
口頭弁論期日に一方の当事者が欠席した場合において、出頭した相手方の陳述のみに基づき裁判を行うことが、当事者の陳述を聴かずに裁判をしたという手続違背(民事訴訟法違反)に該当するか。
規範
民事訴訟法における口頭弁論の原則により、裁判所は当事者双方の陳述を聴取して裁判を行う必要があるが、期日に一方の当事者が欠席した場合であっても、出頭した当事者が第一審での双方の主張を適切に引用・陳述し、かつ欠席当事者の準備書面(答弁書等)に特段の新たな主張が含まれていない等の事情があれば、審理を進行し裁判の基礎とすることができる。
重要事実
控訴審(原審)の第一回口頭弁論期日において、上告人(控訴人)の訴訟代理人が出頭しなかった。これに対し、出頭した被上告人は、自らの主張に加え、第一審における当事者双方(被上告人および上告人)の主張立証についても陳述した。なお、上告人が提出していた答弁書には、新たな主張立証に関する記載は存在しなかった。
あてはめ
本件では、記録によれば原審第一回口頭弁論期日に出頭した被上告人が、控訴趣旨の陳述のみならず、第一審における上告人の主張立証についても併せて陳述していることが認められる。これにより、形式的には一方当事者の欠席があるものの、実質的には上告人の主張も法廷に提供されたものといえる。また、上告人の答弁書に特筆すべき新主張が含まれていなかった点に鑑みれば、原審がこの陳述に基づき判決を言い渡したことに、判決に影響を及ぼすべき法令の違背は認められないと評価される。
結論
一方当事者が欠席しても、出頭した当事者が第一審での双方の主張を陳述している以上、手続違背には当たらず、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和32(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和34年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審において主張立証されなかった事実は、上告審において新たに主張することは許されず、裁判所がそれに基づき判断しなくても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、本件強制執行の債務名義である公正証書記載の債務が、通謀虚偽表示(民法94条1項)や錯誤(同法95条)に基づく無効なものであると主張し、…
実務上の射程
控訴審において第1審の結果を引用する実務上の慣行に関連し、いわゆる陳述擬制(民訴法158条)や、出頭した当事者による前審の主張の引用が適法な審理の基礎となり得ることを示している。答案上は、口頭弁論の形骸化が問題となる場面や、双方審尋主義の充足性が問われる文脈での参照が想定される。
事件番号: 昭和31(オ)198 / 裁判年月日: 昭和33年5月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】使者は本人に代わって意思表示を決定する権限を有さず、単に完成した意思表示を伝達する任務を負うに過ぎないから、民法110条の表見代理が成立するための「基本代理権」を有しているとはいえない。 第1 事案の概要:被上告人(本人)は、別件の10万円の債務に関する連帯保証の意思を記した委任状等の書類を作成し…