判旨
最高裁判所に対する特別抗告(民訴法336条、旧419条の2)が適法となるためには、原決定に憲法違反があることを具体的に主張する必要があり、実質的な訴訟法違反や事実誤認の主張は適法な抗告理由とならない。
問題の所在(論点)
民事訴訟における最高裁判所への特別抗告において、形式的に憲法違反を主張していても、その実質が訴訟法違反や事実誤認の主張にすぎない場合に、適法な抗告理由として認められるか。
規範
最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を持つのは、法律が特別に認めた場合に限られる。特別抗告の理由は、原決定において憲法解釈の誤りがあること、または憲法に適合するか否かの判断が不当であることを主張するものでなければならない。単なる訴訟法違反や事実誤認を憲法違反と称して主張することは、適法な抗告理由にあたらない。
重要事実
抗告人は、原決定(原判決を維持したもの)に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。抗告理由は形式的に「憲法違反」を主張する文言を含んでいたが、その具体的な内容は、原審における手続の違法(訴訟法違反)や、前提となる事実認定の誤り(事実誤認)を不服とするものであった。なお、原判決は一応憲法の適否について判断を示していたが、それは上告理由に実質的な憲法問題が含まれていないにもかかわらずなされた「無用の判示」であった。
あてはめ
本件抗告理由の内容を検討すると、違憲をいう点は含まれているものの、その実質は訴訟法違反や事実誤認の主張に帰結する。原判決が憲法の適否について判断を示している点についても、元の訴えに憲法違反の主張が実質的に含まれていなかった以上、法律上「無用の判示」を攻撃するものにすぎない。したがって、最高裁判所が裁判権を行使すべき適法な憲法問題の提起はなされていないと評価される。
結論
本件抗告は適法な抗告理由を欠くため、不適法として却下される。
事件番号: 昭和29(ク)210 / 裁判年月日: 昭和29年11月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関し裁判権を有するのは、法律により特に最高裁判所への抗告が許容された場合に限られ、民事事件においては憲法違反の判断が含まれる場合にのみ適法となる。本件のように憲法問題を含まない不服申立ては、形式が異議申立てであっても抗告であっても、不適法として却下される。 第1 事案の概要:申立…
実務上の射程
特別抗告の門前払いの基準を示す。答案上、上告理由や抗告理由の適格性が問われる場面で、実質的に憲法問題を含まない「名目的・形式的な憲法違反の主張」を排除する際の根拠として活用できる。特に原判決が不要な憲法判断をしている場合でも、それが抗告理由を正当化しない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和29(ヤ)3 / 裁判年月日: 昭和29年3月24日 / 結論: 却下
最高裁判所がなした上告棄却の判決に対する異議却下決定に対してなされた特別抗告につき、最高裁判所のなした却下決定に対しては再審の申立は許されない。
事件番号: 昭和35(ク)36 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法が特別に認めた場合に限られ、旧民訴法419条の2(現行337条)の特別抗告の要件を満たさないものは不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人は、下級審の判断に対し最高裁判所へ抗告を申し立てた。抗告人はその理由として憲法違反を主張していたが、その…
事件番号: 昭和29(し)23 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張していても、その実質が再審請求の理由の有無を争うものである場合は、刑事訴訟法405条所定の適法な上告(特別抗告)理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、再審請求を棄却した決定に対して特別抗告を申し立てた。その際、憲法違反を理由として掲げていたが、具体的趣旨の内容は、本件再審…
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…