判旨
土地所有者である賃貸人は、賃借人が無断で転貸借を行った場合、賃貸借契約を解除しなくとも、無断転借人に対して直接土地の返還を請求することができる。
問題の所在(論点)
賃貸人が無断転貸を理由に転借人へ土地の返還を請求する際、賃借人との間の賃貸借契約の解除が必要か(民法612条の解除権行使が前提となるか)。
規範
土地所有権に基づく返還請求権(民法202条参照)を行使する際、無断転貸借が行われている場合においては、賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約を解除していなくても、所有者は不法占有者たる転借人に対して直接明渡しを求めることができる。
重要事実
賃貸人(土地所有者)に無断で、賃借人が第三者(転借人)に対して土地を転貸し、当該転借人が土地を占有した。賃貸人は賃借人との間の賃貸借契約を解除することなく、転借人に対して土地の返還を請求した。なお、転貸借についての追認があったとの主張もなされたが、原審では主張されていなかった。
あてはめ
転借人は賃貸人の承諾なく占有を開始しており、賃貸人との関係では不法占有に該当する。賃貸借契約が存続していても、賃借人に転貸の権限がない以上、転借人は賃貸人に対し占有を正当化する権原を対抗できない。したがって、契約解除を待たずとも、所有権に基づく返還請求の要件を満たすと解される。
結論
賃貸人は、無断転貸借による転借人に対し、賃貸借契約を解除せずとも直接土地の返還を請求しうる。
実務上の射程
無断転貸が行われた際、中間者(賃借人)との契約関係を維持したまま、現在の占有者(転借人)を排除したい場合に活用できる。答案上は、物権的請求権の相手方選択と、債権的な占有権原の有無(対抗の可否)を切り分けて論ずる際の根拠となる。
事件番号: 昭和33(オ)506 / 裁判年月日: 昭和33年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾なく土地を転貸した場合、賃貸人は民法612条2項に基づく解除権を行使せずとも、所有権に基づき無断転借人に対して直接土地の明け渡しを請求できる。 第1 事案の概要:地主Dと借地人Eとの間には、転貸借を禁止する特段の約定が存在した。しかし、EはDの承諾を得ることなく本件土地を第三者…
事件番号: 昭和25(オ)87 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 棄却
土地所有者である賃貸人がその承諾のない転貸借によつてこれを占有する転借人に対して直接土地の返還を請求するについては、賃貸借契約を解除しまたは賃借人の承諾を得るを要しない。
事件番号: 昭和50(オ)839 / 裁判年月日: 昭和52年4月7日 / 結論: 棄却
賃貸人は、賃貸借契約を解除することなしに無断再転借人に対し物の返還を請求することができる。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和39(オ)697 / 裁判年月日: 昭和40年5月21日 / 結論: 棄却
無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除が権利の濫用として許されない場合には、特段の事情がない限り、転借人に対し土地所有権に基づく土地明渡請求は許されない。