判旨
建築途中の未完成建物を賃借し、賃借人が造作を施して完成させた場合、賃貸借終了時に造作部分を無償で賃貸人に譲渡する合意があれば、完成した建物全体の所有権は賃貸人に帰属する。
問題の所在(論点)
賃貸借契約締結時に目的物が独立した「建物(不動産)」としての要件を備えていなかった場合、賃借人の加工によって完成した建物の所有権は誰に帰属するか。
規範
建物としての形態を具備する前の建築中の構造物について賃貸借契約を締結し、賃借人の加工により建物として完成させた場合であっても、賃貸借終了時に当該加工部分を無償で賃貸人に譲渡する旨の特約があるときは、完成した建物全体の所有権は賃貸人に帰属し、賃借人は明渡義務を負う。
重要事実
賃貸人(被上告人)と賃借人(上告人)は、屋根が野地板の状態、壁は抜きのみ、床板も一部のみで、畳や建具も入っていない建築中の建物について賃貸借契約を締結した。その際、賃借人が商売向きに自費で造作を施して完成させ、賃貸借終了の明渡時にはその造作部分を無償で賃貸人に譲渡する旨を合意した。その後、賃借人は工事を完了させて建物を現状の姿にしたが、契約終了後も建物の明渡を拒んだ。
あてはめ
本件では、契約成立時点において目的物が不動産としての建物の形態を成していなかったとしても、賃借人が施した造作部分を「終了時に無償で賃貸人に譲渡する」との合意が存在した。この合意に基づき、賃借人の加工によって建物が完成した時点で、加工部分を含む建物全体の所有権が賃貸人に帰属することになる。したがって、契約終了時において建物全体が賃貸人の所有に属している以上、賃借人は建物としての成立時期を問わず明渡義務を免れない。
結論
本件建物の所有権は、賃借人の加工による完成と同時に賃貸人に帰属するため、賃借人は賃貸人に対し建物を明け渡す義務を負う。
実務上の射程
民法上の添付(付合)や建築主の所有権取得の原則に対する特約の有効性を示す。未完成建物の賃貸借という特殊な状況下で、当事者の合意に基づき、賃借人が完成させた建物の所有権を賃貸人に帰属させる構成(造作譲渡特約の効力)として実務上利用できる。
事件番号: 昭和32(オ)74 / 裁判年月日: 昭和33年3月6日 / 結論: 棄却
数個の間接事実をそう合して主要事実を認定した場合、右間接事実の一につき適法な証拠にもとづかないで事実を認定した違法があつても、残余の間接事実により前記主要事実が認定できる以上、右違法は民訴第三九四条にいわゆる判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背にあたらない。