二階建アパートの階下の一画の区分所有権者が、これを賃貸の目的で改造するために取りこわし、柱および基礎工事等を残すだけの工作物とした上で、右工作物を、賃借人の負担で改造する約束で賃貸し、賃借人において約旨に従い建物として完成させた場合には、賃借人の工事により附加された物の附合により、右建物は工作物所有者の所有に帰したものと解すべきである。
改造途中の工作物を賃借人が建物として完成させた場合の附合の成否
民法242条,民法86条1項
判旨
賃借人が自己の費用で建物に造作等を取り付けて建物を完成させた場合であっても、特段の事情がない限り、民法242条本文の規定により、当該建物の所有権は不動産所有者(賃貸人)に帰属する。
問題の所在(論点)
賃借人が自己の費用で他人の工作物を建物として完成させた場合、当該建物の所有権は誰に帰属するか。民法242条本文の附合の成否が問題となる。
規範
不動産の所有者は、その不動産に従として結合した物の所有権を取得する(民法242条本文)。建物としての形態を成すに至っていない工作物を利用し、他者が費用を負担して造作等を取り付け、独立した建物として完成させた場合、当該建物は不動産への附合(242条本文)により、元々の工作物の所有者に帰属すると解される。
重要事実
被上告人(賃貸人)は、改造途中の工作物を所有していた。上告人(賃借人)は、被上告人との間で、当該工作物を利用し、造作等の一切を上告人の負担で取り付ける等の約束で賃貸借契約を締結した。その後、上告人の費用負担により工事が行われ、建物が完成したが、その所有権の帰属が争点となった。
あてはめ
本件では、被上告人が所有していた改造途中の工作物が不動産にあたり、上告人が負担して取り付けた造作等は、当該工作物を建物として完成させるための従たる部分である。上告人と被上告人の間には、上告人の負担で造作を取り付けるとの合意があったが、これは完成後の所有権を上告人に帰属させる合意とは認められない。したがって、民法242条本文の原則通り、従前からの所有者である被上告人の工作物に、上告人の費用による造作等が附合したものと評価される。
結論
完成された建物の所有権は、民法242条本文により被上告人に帰属する。
実務上の射程
賃貸借契約等において、賃借人が増改築や建物の完成を行った場合、特約がない限り不動産の附合理論により賃貸人が所有権を取得することを示す。司法試験では、添付(附合)による所有権帰属の原則を確認する場面や、償還請求権の前提として所有権の所在を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和31(オ)334 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借において、賃貸人が解約の申入れをする際に必要とされる正当事由(旧借家法1条の2)の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃貸人)との間の建物賃貸借契約において、被上告人が解約の申入れを行った。上告人は、当該解約申入れには正当事由…