一 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法二四六条二項の規定に基づいて決定すべきである。 二 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供し工事を施して仕上げた建物の所有権の帰属を民法二四六条二項の規定に基づいて決定する場合において、建前が、屋根瓦が葺かれ、荒壁が塗られて法律上独立の不動産である建物としての要件を具備するに至つた時点における状態に基づいてではなく、加工者の工事が一応終了したと認められる時点までの間に加工者が加えた工事及び材料の価格と建前の価格とを比較して決定すべきである。
一 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合と建物所有権の帰属 二 民法二四六条二項の規定に基づいて加工物の所有権の帰属を決定する場合において他人の動産の価格と比較すべき対象の算定時期
民法243条,民法246条2項
判旨
建築途上の建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の建物とした場合、民法246条2項(加工)を適用し、工作による価格の増加が原材料の価格を著しく超えるときは加工者が所有権を取得する。
問題の所在(論点)
建築途中の「建前」に対し、別の者が材料を供給して工事を施し、独立の不動産(建物)に仕上げた場合、その所有権の帰属は民法のどの規定によって決すべきか。また、その際の判断基準となる時点はいつか。
規範
動産(建前)に工作を加えて新たな不動産(建物)を製造した場合、民法243条の附合ではなく、同法246条の加工の規定を適用して所有権の帰属を決定すべきである。具体的には、独立の建物に至った時点ではなく、一連の工事が終了した時点(または中断時)の状態で、加工によって生じた価格(工作及び材料の価格)と、材料である建前の価格を比較し、前者が後者を著しく超える場合には、加工者が建物の所有権を取得する。
重要事実
下請負人Dは建物の建築に従事し、棟上げ及び屋根下地板の設置まで完了したが、元請負人からの報酬未払いを理由に工事を中断した。この時点では「建前」の状態であり、独立の不動産ではなかった。その後、施主である被上告人は別の業者Gと請負契約(完成後の所有権を施主に帰属させる特約付)を締結。Gは自ら材料を供して屋根、壁、内装等の工事を続行し、建物としての実体を備えるに至った。この際、Dが築造した建前の価格は約90万円であったのに対し、Gの工事による増加価値を含む未完成建物の価格は約418万円であった。
あてはめ
本件におけるGの工事は、単なる修繕にとどまらず、Dの築造した建前に工作を加えて新たな不動産である建物を製造したものといえる。所有権帰属の判定時期は、建物としての要件を具備した瞬間ではなく、工事が中断した時点の状態に基づいて判断すべきである。事実によれば、Gが施した工事及び材料の価格(418万円から90万円を差し引いた額)は、材料である建前の価格(90万円)を遥かに超えており、加工による価格の増加が著しいといえる。したがって、民法246条2項により、建物の所有権はまず加工者であるGに帰属する。その上で、Gと被上告人(施主)との間には、建物所有権を被上告人に帰属させる旨の特約があるため、同特約に基づき、最終的な所有権は被上告人に帰属する。
結論
本件建物の所有権は被上告人に帰属する。建築途中の建前に後続の業者が工作を施した場合は加工の規定(民法246条2項)により解決されるべきであり、本件では加工による増加価値が原材料価格を凌駕しているためである。
実務上の射程
建物の所有権帰属に関する基本判例であり、特に「建前」から「建物」への移行期に複数の関与者がいる場合に有用。答案上は、まず現状が「建物」か「動産(建前)」かを画定した上で、動産である場合には加工の規定を適用するという論理構成を採る。施主との特約の有無を検討し忘れないよう注意が必要である。
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