建物建築工事の注文者と元請負人との間に、請負契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合には、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、右契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する。
建物建築工事の注文者と元請負人との間に出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合と一括下請負人が自ら材料を提供して築造した出来形部分の所有権の帰属
民法632条
判旨
建物建築請負契約が中途解除された場合、注文者と元請負人間の出来形部分の所有権帰属に関する特約は、特段の事情がない限り、一括下請負人にも及ぶ。これにより、自ら材料を提供した下請負人は、注文者に対し出来形部分の所有権を主張して償金請求を行うことはできない。
問題の所在(論点)
元請契約に注文者への所有権帰属特約がある場合において、自ら材料を提供して出来形部分を築造した一括下請負人は、注文者に対して当該部分の所有権を主張できるか(特約の効力が下請負人に及ぶか)。
規範
建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人間の「契約解除時の出来形部分は注文者に帰属する」旨の約定がある場合、元請から一括して請け負った下請負人が材料を提供して築造したとしても、注文者と下請負人間の格別の合意等の特段の事情がない限り、出来形部分の所有権は注文者に帰属する。下請負人は、注文者との関係では元請負人の履行補助者的立場にすぎず、元請負人と異なる権利関係を主張し得る立場にないためである。
重要事実
注文者Aは元請負人Bと、工事中解除の場合は出来形部分をA所有とする特約(本件約定)を含む建築請負契約を締結した。BはAの承諾なく下請負人Cに一括下請させ、Cが自己の材料で工事を行ったが、出来高約26%の段階でBが破産し工事が中断した。AはBとの契約を解除し、別の業者Eに依頼して建物を完成させた。Cは、自己が材料を提供した出来形部分(本件建前)の所有権を主張し、Aが建物として取得したことにつき、不当利得(民法248条・246条)に基づき償金を請求した。
あてはめ
本件では、元請契約に本件約定が存在し、Bの倒産後にAが適法に解除している。Cは一括下請負人の立場にあり、AはCの存在を解除直前まで知らず、特約を排除する「格別の合意」は認められない。また、Aは既に出来高価格の2倍以上の代金をBに支払っており、所有権帰属を否定すべき「特段の事情」もない。CはBの履行補助者にすぎず、本件約定の拘束力を免れないため、本件建前の所有権は解除時にAに帰属したといえる。したがって、Cは所有権を喪失したとはいえず、Aの利得も法律上の原因がある。
結論
本件建前の所有権はAに帰属するため、Cによる不当利得返還(償金)請求は認められない。
実務上の射程
元請契約の特約が下請負人を拘束するという論理は、不動産工事の出来形所有権に関する有力な準則となる。答案では、下請負人が「履行補助者的立場」であることを根拠に、元請契約の枠組みに拘束されることを強調する。ただし、注文者が未払いのまま利得を得るような場合には、本判決が言及する「特段の事情」や補足意見が示す不当利得の余地を検討する必要がある。
事件番号: 昭和39(オ)1209 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
建築材料の一切を請負人において支給し請負代金の前渡もなされていない請負契約においては、特別の意思表示のないかぎり、右契約に基づき建築された建物の所有権は、右建物が請負人から注文者に引渡された時に注文者に移転するものと認めるのが相当である。
事件番号: 昭和39(オ)274 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
民法第一〇〇条但書、商法第五〇四条の適用を主張する当事者は、その要件事実につき主張責任がある。