一、甲が乙に対し乙と同一の営業を一定期間一定区域内で行なわないことを約し、その補償として乙から金銭の交付を受け、甲がこれに違反したときのみでなく、第三者が右期間右区域内で同一の営業をした場合にも右金銭を返還する旨の契約をし、同時にこれと一体不可分の契約をもつて乙が甲から店舗を賃借し、右のような第三者の営業開始等の場合には甲に店舗を返還する旨の特約をしたなど判示の事実関係のもとにおいては、右特約は、第三者の営業開始の事実を条件として当然に賃貸借契約を終了させる趣旨のものではあるが、借家法六条にいう賃借人に不利な特約にあたるものではない。 二、建物を同時履行の抗弁権の行使のためにのみ占有しているにすぎず、これを実際に使用収益していない者は、所有者に対し、占有による不当利得の返還義務を負うものではない。
一、賃借人に不利な特約にあたらないとされた事例 二、同時履行の抗弁権行使のためにのみ建物を占有している場合と不当利得の成否
借家法6条,民法533条,民法703条
判旨
賃貸借契約の終了に関する特約が借地借家法の規定に反し賃借人に不利なものか否かは、形式的な内容のみならず、特約をした当事者の実質的な目的をも考慮して判断すべきである。競業禁止契約と一体不可分な特約として、目的達成が不能となった場合に契約を終了させるものは、直ちに強行規定に反し無効とはならない。
問題の所在(論点)
一定の事実の発生を条件として当然に賃貸借契約を終了させる特約が、借地借家法(旧借家法6条)の強行規定に抵触し、賃借人に不利な特約として無効となるか。
規範
賃貸借契約における特約が、強行規定(旧借家法6条等)に違反し賃借人に不利なものとして無効になるか否かの判断にあたっては、特約自体を形式的に観察するだけでなく、特約を締結した当事者の実質的な目的をも考察することが許される。
重要事実
上告人と被上告人は、上告人が町内で2年間競業しないことを約し、被上告人が補償金75万円を交付する競業禁止契約を締結した。同時に、これと一体不可分なものとして店舗賃貸借契約を締結し、「第三者が2年以内に同町内でパチンコ店を開業したときは1週間以内に返還する」との特約を付した。その後、第三者が開業したため、被上告人は特約に基づき店舗返還を求めたが、上告人は同特約が賃借人に不利な特約であり無効であると主張した。
あてはめ
本件特約は、競業禁止により被上告人が意図した目的が第三者の介入で達成不能となった場合に、補償金の返還と共に賃貸借契約も終了させる趣旨である。これは競業禁止契約と結合された特殊な契約関係における合理的な調整であり、形式的には契約終了を早める内容であっても、当事者の実質的な目的(競業禁止の代償関係)に照らせば、賃借人の保護を目的とする法の趣旨に反するとはいえない。
結論
本件特約は、借家法6条(現行の借地借家法30条・37条等に相当)によって無効とされるものではなく、有効である。
実務上の射程
契約の終了時期を制限する強行規定の適用に関し、形式的な不利益性だけでなく、契約全体の背景や別契約との牽連性を含めた「実質的妥当性」により有効性を肯定する余地を示した。司法試験では、一見して賃借人に不利に見える特約であっても、その経緯や代償措置の有無から、実質的な不利益がないことを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)1104 / 裁判年月日: 昭和43年11月21日 / 結論: 棄却
家屋賃貸借契約において、一箇月分の賃料の遅滞を理由に催告なしで契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効と解するのが相当である。