判旨
上告理由が具体的でなく、単に採証法則の誤りや経験則違反等を抽象的に主張するに過ぎない場合は、適法な上告理由とは認められない。
問題の所在(論点)
上告理由書において、原判決の違法性を具体的に特定せず、抽象的な文言を用いて法令違反等を主張することが、適法な上告理由として認められるか。
規範
上告審において適法な上告理由と認められるためには、原判決のいかなる点にどのような法令違反があるのかを具体的に指摘する必要がある。単に抽象的に「採証法則に反する」「経験則に反する」「理由に齟齬がある」と述べるだけでは、具体的な憲法違反や判例違反、あるいは重大な法令違反の指摘として不十分である。
重要事実
上告人は、原判決には「採証の法則を誤り且経験則に反し事実を認定したる違法あり又理由に齟齬あり」として上告を提起した。しかし、上告代理人の主張は、具体的にどの証拠の取り扱いが不当であるかや、どの事実認定がどのように経験則に反するかを詳述せず、漠然とした主張に留まっていた。
あてはめ
上告人の論旨は、唯漠然と原判決に採証法則違反や経験則違反、理由の齟齬があるというに過ぎない。これは具体的な違法事由を明示して原判決を批判するものではなく、事実上の不服申し立ての域を出ない。したがって、適法な上告理由の提示があったとはいえない。
結論
本件上告は適法な理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
民事訴訟法における上告理由の具体的記載の必要性を示す。司法試験の民事訴訟法において、上告審の構造や上告受理申立ての適法性を論じる際、単なる事実誤認の主張や具体性を欠く法令違反の主張が排斥される根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)784 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張も含まない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が原判決に憲法違反がある等と主張して上告を提起した事案。しかし、その主張の前提となる部分は事実誤認論や独自の法律論に依拠するも…