判旨
裁判所は、当事者が抗弁として主張していない事実について、相手方が自認していたとしても、当該事実が本訴請求の範囲外に関するものである限り、判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
当事者が弁済の抗弁を主張していない場合に、相手方が訴訟外で一定の支払を受けたことを自ら陳述(自陳)した事実について、裁判所は判断を示す必要があるか。弁論主義との関係が問題となる。
規範
弁論主義の原則に基づき、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることはできない。また、相手方が自己に不利益な事実を認める陳述(自陳)をしたとしても、それが本訴請求の範囲外の事項に関わり、かつ当事者からそれに基づく抗弁等の主張がなされていない場合には、裁判所はその点について判断を要しない。
重要事実
被上告人(債権者)が上告人(債務者)に対し、元金10万円および特定の期間以降の遅延損害金の支払を求めた。これに対し上告人は、消費貸借契約の成立自体を否認するのみで、弁済の抗弁を主張しなかった。一方、被上告人は訴訟の中で、本訴請求期間より前の利息等として合計7万2800円の支払を既に受けた旨を自ら陳述していた。
あてはめ
本件において、被上告人が自ら述べた7万2800円の受領事実は、本訴で請求されている元金および昭和24年10月24日以降の遅延損害金とは直接関係のない範囲の支払に関するものである。上告人はこの点について何ら弁済の抗弁を提出していない。したがって、請求対象外の事実に関する被上告人の自陳は、本訴の審理において法的意義を有さず、裁判所がこれに基づき判断を下すべき理由はない。
結論
被告から弁済の抗弁の主張がない以上、原告による請求範囲外の受領に関する自陳について、裁判所は判断を示す必要はなく、請求を認容した原判決に違法はない。
実務上の射程
弁論主義の第一命題(主張責任)を確認する事例。相手方の自陳があっても、それが直ちに有利な事実の主張として扱われるわけではなく、抗弁としての構成(主張)が必要であることを示唆する。答案上は、当事者が主張していない過失相殺や弁済の事実を裁判所が拾えるかという文脈で、主要事実の主張の要否を論じる際の補助的材料となる。
事件番号: 昭和25(オ)268 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭の授受が消費貸借に基づくものであるとの主張に対し、別原因(賠償金の支払)による授受であるとする反論は、単なる否認にすぎない。したがって、主要事実である消費貸借に基づく授受が認定されれば、当該反論を別途抗弁として判断する必要はない。 第1 事案の概要:被上告人が上告人に対し、消費貸借契約に基づき…