判旨
旧民法804条所定の代理権の範囲を踰越した場合であっても、民法110条の表見代理の規定が適用される。相手方が代理権があると信ずべき正当の事由があるときは、表見代理の成立が認められる。
問題の所在(論点)
旧民法804条(法人の代理権の制限等)に基づく制限がある場合に、代理人がその権限を踰越したとき、民法110条の表見代理の規定が適用されるか。また、その際の「正当の事由」の判断が争点となった。
規範
代理人がその権限を踰越して行為をした場合において、相手方がその代理権があると信ずべき正当の事由があるときは、民法110条の規定を適用し、本人の責任を認めるべきである。これは旧民法804条所定の制限を受ける代理人による行為であっても同様である。
重要事実
上告人の代理人が、旧民法804条(現行法の法人等に関する規定に対応する当時の規定)に定められた代理権の範囲を超えて、何らかの法律行為を行った。事実審は、当該事案における各種の具体的諸事情に基づき、相手方において代理権があると信ずべき「正当の事由」があるものと認定した。
あてはめ
本件において、代理人は旧民法804条による制限を超えて行為しているが、同条所定の行為であっても民法110条の適用は妨げられない。事実審が認定した各種の事情を総合すれば、相手方が代理権の存在を信じたことについて過失がない、あるいは信ずるに足りる客観的事由がある「正当の事由」が認められるため、同条の要件を充足する。
結論
民法110条の表見代理が成立するため、上告人は代理人が行った踰越行為について責任を負う。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
法人の内部的な代理権制限や、特別法上の代理権制限がある場合であっても、民法110条が適用され得ることを示した。答案上は、権限外の行為における相手方の信頼保護(取引の安全)を根拠として、110条適用の可否を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)492 / 裁判年月日: 昭和29年12月16日 / 結論: 棄却
所有権に基ずき給付の訴をなすことを得る場合においても、その基本たる権利関係につき即時確定の利益があると認められる限り、これが存否確認の訴を提起することは不適法でない。
事件番号: 昭和40(オ)49 / 裁判年月日: 昭和41年10月18日 / 結論: 棄却
代理人が自己の名を示さず本人の名においてなした行為も代理行為として有効である。