判旨
仮処分命令の本案訴訟において債権者の請求を棄却する判決が確定した場合、保全されるべき権利が存在しないことが明確になったものとして、当該仮処分命令は維持できず取り消されるべきである。
問題の所在(論点)
仮処分命令の発令後に本案訴訟において債権者敗訴の判決が確定した場合、当該仮処分命令の効力はどうなるか。被保全権利の不存在が確定したことによる仮処分命令の取消しの可否が問題となる。
規範
民事保全法に基づく仮処分命令は、被保全権利の存在を前提とするものである。したがって、本案訴訟の確定判決によって被保全権利の不存在が確定した場合には、事情の変更(民事保全法38条1項)等の取消事由の有無にかかわらず、当該仮処分命令を維持することはできず、取り消されるべきものと解する。
重要事実
債権者は、不動産所有権移転登記手続等および不動産所有権確認等を本案とする仮処分命令を得ていた。しかし、当該本案訴訟の上告審において、債権者(原告)の請求を棄却する判決が言い渡され、確定した。これにより、仮処分によって保全されるべき権利が存在しないことが確定判決により明確になった。
あてはめ
本件において、仮処分の本案たる不動産所有権移転登記手続等請求事件等について、最高裁判所の判決により請求棄却が確定したことは裁判所に顕著な事実である。この確定判決により、本件仮処分によって保全されるべき権利は存在しないことが法的に確定したといえる。そうであれば、前提となる権利を欠く以上、本件仮処分命令を維持することは正当化されないと評価される。
結論
本案訴訟で請求棄却の判決が確定した以上、保全されるべき権利の不存在は明らかである。したがって、原審が本件仮処分命令を取り消した判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
本案訴訟における債権者敗訴の確定は、民事保全法上の取消事由(事情の変更等)に該当し、仮処分取消しの強力な根拠となる。答案上は、保全取消しの実体上の理由として、本案判決の既判力による被保全権利の不存在を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)122 / 裁判年月日: 昭和27年11月20日 / 結論: 棄却
仮処分決定があつた後に仮処分申請者がその本案訴訟で敗訴の判決を受けた場合においては、その確定前であつても、裁判所は自由裁量によつて本案判決が上級審において取り消されるおそれがないと判断するときには、事情の変更があつたものとして仮処分決定を取り消すことができる。