判旨
忌避申立てを理由なしとして棄却する決定が確定した場合、訴訟手続の停止をせずになされた判決は当然には無効とならず、また、本案の一・二審で敗訴した事実は民事保全法上の事情変更による取消事由となり得る。
問題の所在(論点)
1. 忌避申立てによる訴訟手続停止義務に違反してなされた判決の有効性。 2. 本案訴訟における敗訴判決の存在が、民事保全法上の「事情の変更」に該当するか。
規範
1. 裁判官の忌避申立てがあった場合、原則として訴訟手続を停止すべきであるが(民訴法40条1項参照)、申立てを理由なしとして棄却する決定が確定したときは、当該判決は法律により判決に関与できない裁判官が関与したもの(同312条2項2号参照)とはいえず、無効とはならない。 2. 保全命令の取消事由たる「事情の変更」とは、保全命令を発した後に生じた事情により、保全の必要性または被保全権利の存在が疑わしくなった場合をいう。本案訴訟における一・二審での敗訴判決の存在は、被保全権利の不存在を一応疎明するものとして、事情の変更を肯定する一要素となり得る。
重要事実
上告人は、控訴審の口頭弁論終結および判決言渡期日の指定がなされた日に、裁判官3名に対する忌避の申立てを行った。しかし、原裁判所は訴訟手続を停止することなく、指定された期日に上告人敗訴の判決を言い渡した。その後、忌避申立ては理由なしとして棄却され確定した。また、本件仮処分決定の取消申立てに対し、原審は上告人が本案訴訟の一・二審で敗訴した事実を根拠に、事情の変更が生じたとして仮処分を勝訴させた。
あてはめ
1. 本件では忌避申立て後に判決が言い渡されているが、その後の裁判手続において当該忌避申立てを理由なしとする棄却決定が確定している。したがって、実質的に判決に関与すべきでない裁判官が関与したとはいえず、手続上の瑕疵は治癒されていると解される。 2. 仮処分決定の基礎となった被保全権利の存否について、本案訴訟の一審および控訴審がともに否定的な判断(敗訴判決)を下した事実は、被保全権利がないことを一応疎明するに足りる重大な事情の変化といえる。これを理由に保全命令を取り消すことは法的に許容される。
結論
1. 忌避棄却決定が確定した以上、停止せずになされた判決は無効ではない。 2. 本案敗訴の事実は事情の変更を基礎付ける判断要素となり得るため、原判決に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
実務上、不適法な忌避申立てが訴訟遅延目的でなされる際の手続進行の有効性を担保する射程を持つ。また、民事保全手続において、本案判決の結果が保全取消し(事情変更)に直結する有力な事情となることを認めた重要な基準である。
事件番号: 昭和27(オ)744 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事情変更を理由とする仮処分取消の申立てについて、原審が認定した事実関係に基づき、民事訴訟法(当時)の規定に則り取消を認めた判断は正当である。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対してなされた本件仮処分命令について、原審において事情変更が生じたことを理由に取消しを求めた。第一審は事情変更を認めて…