一 仮処分の方法により強制執行を停止することは許されない。 二 請求異議の訴は、強制執行の着手前であつても提起することができる。
一 仮処分による強制執行停止の許否 二 強制執行着手前の請求異議の許否
民訴法760条,民訴法545条
判旨
確定判決に基づく強制執行の停止は、民事執行法上の停止規定が制限的に列挙されているため、仮処分の方法によって停止を求めることは許されない。
問題の所在(論点)
確定判決に基づく強制執行を停止するために、民事執行法上の停止手続によらず、一般の仮処分(民事保全法上の処分)を申し立てることは可能か。
規範
確定判決に基づく強制執行を停止できる場合は、民事執行法(旧民訴法強制執行編)の各条文に定められた場合に限られており、これらは制限的に列挙されたものである。したがって、法律に明文の規定がある場合を除き、一般に民事保全法(旧民訴法)上の仮処分の方法によって強制執行を停止することは、同法全般の趣旨に照らし許されない。
重要事実
債務者である被上告人が、確定判決(債務名義)に基づく強制執行を停止させるため、債務名義に表示された権利の不存在を主張して仮処分を申請した。原審(福岡高裁)は、執行着手前でも実体関係を争う必要があるとして仮処分を認可したが、上告人がこれを不服として、強制執行停止を目的とする仮処分の許否を争った事案である。
あてはめ
原審は、請求異議の訴えの提訴前などの事情を考慮して仮処分を是認したが、請求異議の訴え(民執法35条)は強制執行着手前でも提起可能であり、その判決が出るまでの間は、同法に基づく執行停止の裁判(民執法36条等)を得る道が開かれている。強制執行制度の安定性の観点から、停止手続は法が定める類型に限定されるべきであり、本件申請のように仮処分によって執行停止を図ることは、法の予定しない手続外の手段であるといえる。
結論
本件仮処分申請は却下されるべきである。確定判決に基づく強制執行を仮処分の方法により停止することは認められない。
実務上の射程
本判決は、民事執行手続と民事保全手続の峻別を明示したものである。答案上は、執行停止を求める文脈で「保全処分による代替の可否」が問われた際、執行法上の停止規定(民執法36条、39条等)の排他性を根拠として、仮処分による停止を否定するために引用する。請求異議の訴え等、本案の訴えに伴う停止決定のみが唯一の手段であることを強調する際に有用である。
事件番号: 昭和24(オ)52 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
執行吏に係争土地の保管を命じた仮処分命令中に、仮処分債権者が右土地に立ち入り建築工事をすることにつき執行吏にこれを許可する権限を与えていないときは、仮処分債権者は、右仮処分の執行により右土地に立ち入り建築工事することは許されない。
事件番号: 昭和23(マ)3 / 裁判年月日: 昭和23年3月3日 / 結論: 却下
仮処分を命じた判決に対し上訴の提起せられた場合、その判決の内容が、権利保全のためにする緊急処置たる範囲を逸脱して権利の終局的実現を命じているときの外、仮処分判決の執行停止決定をすることはできない。