執行吏に係争土地の保管を命じた仮処分命令中に、仮処分債権者が右土地に立ち入り建築工事をすることにつき執行吏にこれを許可する権限を与えていないときは、仮処分債権者は、右仮処分の執行により右土地に立ち入り建築工事することは許されない。
仮処分債権者と仮処分の効力
民訴法755条
判旨
先行する仮処分命令により目的物が執行吏の保管下に置かれ、債権者の立入りや建築が禁止されている場合、後発の仮処分命令が同内容を禁じても、債権者は後発仮処分の取消しを求める利益を有しない。
問題の所在(論点)
先行する仮処分によって既に土地が執行吏の保管下にあり、債権者(上告人)に立入りや建築の権限が与えられていない場合、後発の立入禁止等の仮処分を争う「取消しの利益」があるか。
規範
仮処分命令に対する取消しの申立てが適法であるためには、その取消しによって申立人が現実に法的利益を得る関係にあること、すなわち「取消しの利益」が認められなければならない。既に他の執行手続によって当該行為が禁止されている場合には、新たな仮処分の存否によって申立人の法的地位が左右されないため、取消しの利益は否定される。
重要事実
上告人は、被上告人に対し借地権確認の訴えを提起し、執行保全として本件土地を執行吏に保管させる仮処分を得て執行した。しかし、上告人が当該土地で建築工事を開始したため、今度は被上告人が上告人に対し、本案確定まで工事の停止と土地への立入りを禁止する本件仮処分を得た。上告人はこの本件仮処分の取消しを求めて争った。
あてはめ
上告人自身が申し立てた先行仮処分により、本件土地は既に執行吏の占有保管下にあり、執行吏は上告人に対しても土地への立入りや建築を許可する権限を付与されていない。したがって、上告人は被上告人の申立てによる本件仮処分がなされる以前から、既に土地への立入りや建築が許されない法的状態にあったといえる。そうであれば、本件仮処分が取り消されたとしても上告人が立入りや建築を行えるようになるわけではなく、本件仮処分の有無は上告人の権利関係に影響を及ぼさない。
結論
上告人には本件仮処分を取り消すことによる利益が認められないため、取消しの申立ては排斥されるべきである。
実務上の射程
仮処分の取消手続における「申立ての利益」の有無に関する判断枠組みとして活用できる。先行する執行手続や処分によって既に目的が達せられている場合や、義務者が既に権利を制限されている場合には、後続の処分を争う実益がないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和24(オ)273 / 裁判年月日: 昭和26年4月3日 / 結論: 破棄自判
一 仮処分の方法により強制執行を停止することは許されない。 二 請求異議の訴は、強制執行の着手前であつても提起することができる。
事件番号: 昭和24(オ)230 / 裁判年月日: 昭和26年2月6日 / 結論: 棄却
一 特別事情による仮処分取消申立事件において、仮処分の取消により債権者の被ることあるべき損害が金銭によつて償われ得るものであることが認められる以上、その他の争点については判断することなく仮処分を取り消しても違法ではない。 二 特別事情による仮処分取消申立事件において、仮処分の取消により債権者の被ることあるべき損害が金銭…