判旨
控訴審において判決の一部を変更する場合、主文に控訴棄却と変更の文言が併記されても、判決全文からその趣旨が明確であれば直ちに主文矛盾の違法とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審判決の主文において、控訴棄却の表示と原判決変更の表示が併記されている場合、判決の主文に矛盾があるといえるか(民事訴訟法判決の構成不備の適法性)。
規範
控訴を一部理由ありとする場合、主文において原判決中の不当な部分のみを取り消して改めて自判し、他の正当な部分については控訴を棄却して原判決を維持する旨を明確にすれば足りる。実務上の慣例として「原判決を次のとおり変更する」と記載し、変更部分と維持部分を並記することで控訴の認容範囲を特定することも許容されるが、不要な記載が含まれていても判決全体から合理的に解釈可能であれば、主文矛盾には当たらない。
重要事実
第一審が離婚請求を認容し、子3名全員の親権者を父(控訴人)と定めた。父が離婚部分を不服として控訴したところ、控訴審は離婚請求の認容は正当としたが、職権で子1名の親権者を母(被控訴人)に変更するのが相当と判断した。控訴審は主文第1項で「本件控訴を棄却する」と記しつつ、第2項以下で「原判決を次のとおり変更する」として離婚と親権者の裁定(1名につき母に変更)を記載したため、主文が矛盾しているとして上告された。
あてはめ
本件控訴審は、離婚請求については第一審判決を正当として維持する(控訴棄却相当)一方で、親権者の指定については第一審判決を失当と認めて一部変更を企図したものである。主文第1項の「控訴を棄却する」との記載は、離婚に関する第一審判決を維持する趣旨を表現したものであり、第3項の離婚を宣言する記載と趣旨において重複するに過ぎない。したがって、第1項は無用な記載ではあるものの、第2項以下の変更表示とあわせて判決全文を検討すれば、どの範囲で原判決が維持され、どの範囲で変更されたかは明確に了解できる。
結論
主文第1項の記載は第3項と同一の趣旨を重複して表明したに止まり、前後矛盾するものではないため、主文矛盾の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
主文の合理的な解釈手法を示した事例。実務上、控訴一部認容の場合に「原判決を次のとおり変更する」との形式をとる際の主文の読み解き方に有用である。ただし、本件のように控訴棄却と変更を不適切に併記することは避けるべきであり、答案作成上は主文の明確性の重要性を指摘する文脈で参照し得る。
事件番号: 昭和38(オ)88 / 裁判年月日: 昭和40年7月16日 / 結論: 棄却
原被告間に昭和二九年一二月一日離婚判決が言い渡され、同年同月二三日右判決が確定している事実があるからといつて、右確定前である同年一一月九日両者間になされた協議離婚につき、原告不知の間に被告において離婚届を偽造してなしたものであることを理由に、原告がその無効確認を求めて訴を提起することに、法律上の利益がないとはいえない。