判旨
建物の敷地の範囲は、特別の事情がない限り、建物の土台外郭線や雨落線以内の土地だけでなく、建物の使用収益に必要として付随せしめられた土地や、社会通念上必要不可欠な土地を含む。
問題の所在(論点)
建物の敷地の範囲はどの程度まで認められるか、および、土地所有者が建物収去土地明渡しを請求することが権利の濫用に当たるか。
規範
建物の「敷地」の範囲は、特別の事情がない限り、単に建物の土台外郭を連結した線(建物の投影面)や雨落線以内の土地に限られない。建物所有者等が建物の使用収益上必要としてこれに付随せしめた土地、あるいは社会通念上、その建物の使用収益に必要不可欠と認められる土地をも含むと解すべきである。
重要事実
昭和20年7月の空襲により焼失した建物Dの所有者Eが、当時、本件係争土地をその所有者Fの許諾の下で建物Dの敷地として利用していたかどうかが争点となった。上告人は当該土地が建物敷地に含まれる旨を主張したが、記録上、EがFの許諾を得て本件土地を敷地としていたことを確認するに足りる事績や立証は認められず、原審もその事実を認定しなかった。
あてはめ
規範に照らせば、敷地の範囲は社会通念上の必要不可欠性等で決まるが、本件では、罹災当時に本件土地が建物Dの敷地として正当な権原(所有者Fの許諾)に基づき付随せしめられていた事象が認められない。したがって、本件土地は建物Dの敷地の範囲には含まれない。また、原審が認定した事実関係に基づけば、被上告人Bが所有権侵害を理由に建物収去土地明渡しを求めることは、権利の濫用には当たらないと評価される。
結論
本件土地は建物の敷地の範囲に含まれず、被上告人の請求は正当であって権利の濫用にも当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
建物の敷地の範囲について、物理的な占有部分のみならず、社会通念や利用目的による拡張を認めた判断枠組みである。土地の明け渡し請求に対する防御として「敷地」の範囲を争う際の基準として機能する。また、権利の濫用(民法1条3項)の成否についても、原審の具体的な事実認定を前提に追認している。
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