一 定款所定の目的が「一、一般木工品の製造、二、船舶用器具の製造、三、埋木の発掘並に加工、四、和用家具類の製造並に販売、五、生糸の製造並に加工販売、六、統制外物資の斡旋、七、関係事業に対する投資、八、前各号に附帯する一切の事業」である株式会社が、他人の借地契約上の債務について連帯保証契約をすることは、特段の反証のない限り、会社の目的遂行に必要な事項であつて、会社の目的の範囲内に属する行為と認めるべきである。 二 土地賃借人のため保証契約をなした者は、当時の賃料が1ケ月二五〇円であつても、賃貸借終了後の該土地の一ケ月の賃料相当の損害金が三、〇〇〇であるときは、その額について支払義務を免れるものではない。
一 会社の目的の範囲内の行為と認めるべき一事例 二 土地賃貸借契約における保証人の義務の範囲
民法43条,民法446条,民法447条
判旨
会社の権利能力の範囲である「目的の範囲内」の行為とは、定款に掲記された個々の事項に限定されず、目的達成に直接・間接に必要なすべての行為を含む。
問題の所在(論点)
会社の権利能力を画する定款の「目的の範囲内」(民法34条参照)という要件をどのように解釈すべきか。また、他社の債務を連帯保証する行為がこれに含まれるか。
規範
会社の権利能力は、定款に定められた目的の範囲内に限定されるが、その「目的の範囲内」とは、定款に掲記された個々の事項のみならず、その目的を達成するために直接または間接に必要な行為はすべてこれに含まれるものと解する。
重要事実
上告会社は、定款に定められた目的を有する株式会社であったが、他社である株式会社D商店が被上告人の先代(亡E)との間で締結していた借地契約上の債務について、連帯保証契約を締結した。その後、借地契約上の債務不履行に基づき、被上告人側が上告会社に対して連帯保証債務(賃料相当損害金)の履行を求めて提訴した。これに対し、上告会社は当該保証契約が定款の目的外であり無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和38(オ)958 / 裁判年月日: 昭和39年7月29日 / 結論: 棄却
賃借地上の建物の譲渡に伴い、地主の承諾なくして賃借権が譲渡された場合には、地主は建物譲渡人に対する賃料請求権を失わないけれども、現実に譲渡人より右賃料の支払を受けないかぎり、譲受人に対して賃料相当の損害金の請求ができる。
あてはめ
定款の目的達成に必要な行為であれば「目的の範囲内」に属するところ、本件において上告会社がD商店のために連帯保証をすることは、特段の反証がない限り、上告会社の目的遂行に必要な事項であると認められる。したがって、当該連帯保証契約は上告会社の権利能力の範囲内の行為として有効である。また、保証の対象が賃料そのものではなく賃料相当損害金であっても、契約の範囲内であると判断される。
結論
本件連帯保証契約は上告会社の目的の範囲内に属する行為であり、上告会社は保証債務の履行責任を負う。
実務上の射程
会社の権利能力を広汎に認める「目的外行為」に関するリーディングケースである。答案上では、定款記載の目的と一見無関係に見える取引(保証や寄付等)の効力が争点となる際、本判例の「直接・間接に必要」という広義の解釈枠組みを示した上で、当該行為が事業継続や取引関係の維持に資するかという観点からあてはめる際に用いる。
事件番号: 昭和28(オ)1118 / 裁判年月日: 昭和30年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づく借地権の対抗要件の成否は、通常の借地権の対抗に関する一般原則とは異なる独自の特別法上の規律による。 第1 事案の概要:上告人は所有権に基づき土地の明け渡しを請求したが、原審は罹災都市借地借家臨時処理法10条を適用し、被上告人が借地権を第三者(上告人)に対抗で…
事件番号: 昭和30(オ)698 / 裁判年月日: 昭和32年11月15日 / 結論: 棄却
都市計画実施のために先代以来の営業場所から立退を求められた者が、附近の宅地を移転先に充てるため、地上に工場を所有する借地人において近くその明渡をなす約束であるとの地主の言を信じてこれを買い受けたところ、期限到来の後も明渡を受け得られず自らは立退を迫られた末、借地人を相手方とする土地明渡の調停事件において、右宅地の必要性…
事件番号: 昭和31(オ)258 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】催告期間内に「本旨に従う履行の提供」がなされない限り、解除権の発生を妨げることはできず、期間経過後の履行提供は解除の効力を左右しない。また、特段の事情がない限り、有効な催告に基づく解除権の行使は権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は債務の履行を怠り、被上告人から相当期間を定めた催告…