判旨
不動産の使用により生じた損害金を算定する際、公法上の地代家賃統制令が適用される期間については、統制額を超えた額を損害金として認めることはできない。
問題の所在(論点)
不法占有に基づく賃料相当損害金の算定において、地代家賃統制令の適用がある期間につき、統制額を超えた額を損害として認定できるか。特に改正前の同令において店舗用家屋が統制の対象に含まれるかが問題となる。
規範
不法占有に基づく損害賠償額(相当賃料額)を算定するにあたっては、その対象物件に地代家賃統制令の適用がある場合、特段の事情がない限り、同令によって制限される統制賃料額を基準とすべきである。法令により適法に収益し得ない金額を損害として認めることは許されないため、店舗用家屋であっても改正前の同令の適用を受ける期間については、統制額を超える損害を認めることはできない。
重要事実
上告人らが、被上告人の所有する家屋(店舗)を昭和24年10月4日から昭和25年10月16日まで占有したことに対し、被上告人が家賃相当額の損害賠償を求めた。原審は、当該家屋が店舗であることを理由に、昭和25年7月11日の改正(店舗等の適用除外)前であっても地代家賃統制令の適用がないものと解し、統制額に縛られず売買価格から算出した月額675円を相当賃料(損害額)として認めた。これに対し、上告人らが法令適用の誤りを主張して上告した。
あてはめ
昭和25年7月11日の政令第225号による改正前の地代家賃統制令では、国・都道府県が貸主である場合等を除き、店舗用家屋も広く統制の対象に含まれていた。本件損害発生期間のうち、改正施行日前の期間については依然として同令が適用されるべきである。原審が「店舗であるから同令の適用を除外される」として、改正前の期間も含めて一律に統制額を無視し、売買価格を基準に損害額を算定したのは、適用すべき法令を適用せず、または法令の解釈を誤った違法がある。
結論
原判決中、上告人ら敗訴部分を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。改正前の期間については、地代家賃統制令の制限に従った損害額の再算定を要する。
実務上の射程
物件の不法占有による損害賠償請求において、公法上の公定価格や統制額が存在する場合、私法上の損害賠償額もその上限に拘束されることを示した事例。実務上は、賃料規制や公法上の制限がある期間の損害金算定において、当時の法令上の制限額を調査・反映させる必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和29(オ)623 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の終了が認められない場合、賃借人は依然として適法な占有権原を有するため、その占有は不法占有には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)が、被上告人(賃借人)に対し、賃貸借契約が終了したと主張して不法占有の事実を訴えた事案。原審は、上告人が主張する事由による賃貸借終了の事実を認めず…