借家法第五条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。
造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係――留置権または同時履行抗弁権の成否
借家法5条,民法295条,民法533条
判旨
造作買取代金債権は建物に関して生じた債権ではないため、建物賃貸借の終了に伴う建物の明渡請求に対し、借主は当該債権を被担保債権とする留置権を主張して建物の明渡しを拒むことはできない。
問題の所在(論点)
建物の賃貸借終了時における造作買取代金債権を被担保債権として、賃借人は当該建物につき民法295条1項に基づく留置権を行使できるか。
規範
留置権(民法295条1項)が成立するためには、債権が「その物に関して生じた」ものであるという被担保債権と目的物との牽連性が必要である。造作買取代金債権は、建物に付加された造作に関して生じた債権にすぎず、建物自体に関して生じた債権とは認められない。
重要事実
建物の賃借人が、賃貸借契約の更新拒絶がなされた際に、建物に附属させた造作の買取代金債権に基づき、当該建物の明渡しを拒んだ事例(詳細な事実は判決文からは不明)。
あてはめ
本件における造作買取代金債権は、建物に付加された特定の造作から生じたものであり、建物の対価や維持管理費用ではない。したがって、当該債権は造作との間には牽連性が認められるものの、建物自体との間には「その物に関して生じた」といえる直接的な関連性が認められない。よって、建物に対する留置権を成立させる余地はない。
結論
造作買取代金債権を被担保債権として、建物について留置権を主張することはできない。
実務上の射程
賃貸借終了時の紛争において、建物明渡請求を拒む手段として留置権を主張する際の標準的な判断枠組みとして機能する。敷金返還請求権についても同様に建物との牽連性が否定される(最判昭33・7・17等)が、それと並んで造作買取代金債権の牽連性を否定する基本的判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和25(オ)272 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が土地に施した地盛費の償還請求権(民法295条1項)は土地に関して生じた債権であるが、建物明渡請求に対してこれを行使し、建物の明渡を拒絶することはできない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人の承継人)から本件建物の明渡を求められた。これに対し、上告人は賃借土地に施した「…