一 家屋の賃借人が自発的に値上した金額に基いて、賃貸人が賃料の支払を催告し、その総額が六、〇〇〇円であり、うち四九〇円が家賃の統制額を超えていたとしても、催告全部が無効となるのではなく、正当賃料の限度で有効である。 二 甲乙丙がいずれも一家屋の不法占有者であるとしても、乙及び丙の占有部分がそれぞれ右家屋の一部に過ぎないときは、乙丙は甲と連帯して家屋全部の賃料相当額を支払う義務はない。
一 統制額を超える賃料支払の催告 二 数人による家屋の不法占有と賠償義務の範囲
民法541条,民法719条
判旨
賃料支払催告に際し、請求額に統制額を超過する部分が含まれていても、直ちに催告全部が無効となるわけではなく、正当な賃料の限度で有効である。また、建物の一部を個別に占有する者に対し、当然に建物全体の賃料相当損害金を連帯して請求することはできない。
問題の所在(論点)
1. 正当な賃料額を超過した金額による催告に基づき、解除の効力が生じるか。 2. 建物の各部分を独立して占有する者に対し、建物全体の賃料相当損害金を連帯して請求できるか。
規範
1. 賃料の催告において、請求額が正当な賃料額を超過している場合であっても、それが僅少な超過であるなど特段の事情がない限り、正当な賃料額の限度において催告としての効力を有する。 2. 建物の各部分を各独立の占有主体として占有する者らに対しては、特段の事情がない限り、各自が占有する範囲を超えて建物全体の賃料相当損害金を当然に連帯して負わせることはできない。
重要事実
賃借人Dは月額150円の賃料を滞納した。賃貸人(被上告人)は、滞納賃料の支払を催告し、不履行を条件とする解除の意思表示をした。しかし、請求額6000円のうち490円は家賃統制法規による統制額を超過していた。また、建物の一部をそれぞれ独立して占有している上告人らに対し、原審は家屋全体の統制賃料額に基づき、連帯して賃料相当損害金を支払うよう命じた。
あてはめ
1. 請求総額6000円に対し超過額は490円に過ぎず、この程度の超過額を含んでいたとしても、催告全部が無効になるものではない。したがって、正当賃料の限度で催告は有効であり、これに基づく解除も有効である。 2. 上告人らは建物の一部を各自独立の主体として占有しており、建物全体を共同で不法占有しているとはいえない。各人が占有する部分の対価を超え、建物全体の金額を連帯して負担させるべき理由が示されておらず、原審の判断は理由不備である。
結論
1. 催告は正当賃料の範囲で有効であり、解除は認められる。 2. 損害金については、一部占有者に建物全体の支払を連帯して命じることはできず、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
賃料不払による解除において、請求額の多少の過誤は解除の効力を妨げないという実務上の準則を示す。損害金については、複数占有者に対する請求において占有範囲に応じた個別的な立証・算定が必要であることを示唆している。
事件番号: 昭和28(オ)789 / 裁判年月日: 昭和29年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除に伴う催告において、催告された金額が真実の延滞額を超過していても、その超過額が僅少であれば、催告の効力は妨げられない。 第1 事案の概要:土地の賃貸人である被上告人が、賃借人である上告人に対し、延滞賃料の支払いと不払いの場合の契約解除を通知する催告を行った。この際、催告された金額は…