右請求の付加により、賃料催告の適法性は失われない。
履行期の到来した賃料の催告に履行期未到来の賃料の事前の請求を付加した場合と右催告の適否。
民法541条
判旨
賃貸人が既発生の賃料債務不履行に基づき解除のための催告をする際、あわせて将来発生する賃料の事前請求を付加したとしても、それにより催告の適法性は左右されない。
問題の所在(論点)
履行期が未到来の賃料債務の事前請求を、既発生の賃料債務の履行催告に付加して行った場合、その催告は賃貸借契約解除の前提となる適法な催告といえるか。
規範
賃貸借契約の解除要件としての催告(民法541条)は、既に履行期が到来している債務の不履行を対象とする必要がある。しかし、適法な履行の催告を行う際、これに併せて将来発生する債務の事前請求を付加したとしても、その一事をもって既発生の債務に対する催告の効力が妨げられるものではない。
重要事実
賃借人(上告人)は、昭和32年6月分および7月分の賃料(履行期は各5月25日、6月25日)を支払わなかった。賃貸人は、同年7月22日に到達した書面により、上記2ヶ月分の未払賃料合計2万円を同年7月25日までに支払うよう催告した。その際、賃貸人は従来の不履行の事実に鑑み、まだ履行期が到来していない同年8月分の賃料1万円についても、約定の履行期である7月25日までに支払うよう予め請求を付加した。
あてはめ
賃貸人が行った書面による通知は、既に履行期が徒過している6月分および7月分の賃料(計2万円)の履行を求めるものであり、解除の前提となる催告としての要件を満たしている。8月分賃料の請求は、従来の不履行に基づき「約定の履行期には必ず履行されたい」旨をあわせて通知した趣旨にすぎない。したがって、未到来の債務に関する事前請求が併記されていたとしても、既発生の債務に対する催告としての性質や効力を何ら左右するものではないと評価される。
結論
本件催告は、賃貸借契約解除の前提となる催告として適法である。したがって、催告期間内に支払がなかったことを理由とする解除は有効である。
実務上の射程
催告に過大な金額や未到来の債権が含まれている場合でも、それが既発生の債務の履行を求める趣旨を損なわない限り、催告全体の効力を否定しないとする実務上の柔軟な判断を示す。答案上は、催告の対象債権の特定性や過大催告の論点と関連させて活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1188 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: その他
一 家屋の賃借人が自発的に値上した金額に基いて、賃貸人が賃料の支払を催告し、その総額が六、〇〇〇円であり、うち四九〇円が家賃の統制額を超えていたとしても、催告全部が無効となるのではなく、正当賃料の限度で有効である。 二 甲乙丙がいずれも一家屋の不法占有者であるとしても、乙及び丙の占有部分がそれぞれ右家屋の一部に過ぎない…