二口の債務を同時に催告した場合において、一口分に超過催告の違法があつても、他の一口分につき提供がないことを理由として契約を解除することは差し支えない。
二口の債務の催告における一口分につき超過催告の違法がある場合と契約解除
民法541条
判旨
複数の債権を一括して催告した場合であっても、そのうちの一方の債権(延滞賃料)が全額提供される限り、債権者はその受領を拒めない。したがって、債務者が一部のみを提供しても受領しないことが客観的に明白とはいえない場合、提供を怠れば解除は有効となる。
問題の所在(論点)
賃貸人が賃料債務とそれ以外の債務(立替金)を併せて催告した場合において、賃借人が賃料相当額の提供すら行わなかったとき、賃貸人に受領拒絶の明確な意思があったとして提供義務が免除されるか。
規範
債権者が複数の債権を併せて催告した場合であっても、そのうちの一つの債務について全額の提供がある限り、債権者はその受領を拒むことはできない。したがって、全額の提供がない限り、債権者が受領を拒絶する意思が客観的に明確であると直ちに断定することはできず、原則として債務者は提供の義務を免れない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は賃借人(上告人)に対し、延滞賃料3万9000円および立替金(電気・ガス・水道代)7万3052円の合計額を、7日以内に支払うよう催告し、不払いの場合は契約を解除する旨の条件付解除の意思表示を行った。しかし、賃借人は期間内にいずれの支払いも行わなかった。賃借人は、賃貸人が全額(賃料+立替金)の支払いでなければ受領しない意思を有していたため、賃料のみを提供しても受領拒絶されたはずだと主張して、履行の提供の不要を訴えた。
あてはめ
被上告人が催告したのは賃料と立替金の二口の債権である。この場合、上告人が延滞賃料分のみを全額提供したならば、被上告人はその受領を拒むことは許されない。そうである以上、上告人が賃料分すら提供していない本件においては、被上告人が「たとえ賃料額のみの提供があってもこれを受領しない意思が明らかであった」とは認められない。したがって、上告人の履行の提供がない以上、催告に基づく解除の効果を妨げることはできない。
結論
被上告人(賃貸人)による本件賃貸借契約の解除は有効である。
実務上の射程
催告に過大請求や別債権の併記が含まれる場合の解除の可否に関する判例。債権者が「全額でなければ受領しない」とあらかじめ明確に拒絶している特段の事情がない限り、債務者は本来支払うべき額(本件では賃料)の提供を省略できない。司法試験においては、履行遅滞に基づく解除の有効性を論じる際、提供の有無や受領拒絶の法理のあてはめで引用すべき一審級の判断を維持した最高裁判例である。
事件番号: 昭和32(オ)413 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が一部の弁済を提供し残務の猶予を申し入れた際、債権者が全額でなければ受領しない旨を回答した場合であっても、それが催告金額全体の受領拒絶を確定的に示したものでない限り、適法な提供とは認められない。 第1 事案の概要:賃借人である上告人の妻Dは、延滞賃料の催告期間の末日に、賃告人である被上告人方…