判旨
不法占有による損害賠償を請求する場合において、その損害額の算定は原則として賃料相当額によるべきであるが、その算定の基準となる時期は不法占有の全期間にわたるべきである。
問題の所在(論点)
不法占有に基づく損害賠償請求において、損害額の算定基準となるべき時期およびその算定方法が、民法709条の解釈としてどのように解されるべきか。
規範
不法占有に基づく損害賠償請求(民法709条)における損害額の算定は、特段の事情がない限り、当該物件の賃料相当額を指標として算定される。この際、損害は日々の占有によって逐次発生するものであるから、算定の基礎となる価格(賃料相場)は、不法占有が行われた期間全体における各時点の時価を反映すべきである。
重要事実
上告人が他人の土地を権原なく占有(不法占有)したことに対し、被上告人が不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。原審が損害額を算定するにあたり、特定の時点の価格のみならず不法占有の継続期間全体を考慮したことに対し、上告人が法令解釈の誤り等を主張して上告した。
あてはめ
本判決は、論旨が民事上告事件の審判の特例等に該当しないとして上告を棄却しているが、参照判例(昭和23年12月14日判決)の趣旨を維持している。不法占有という継続的侵害においては、損害は時の経過とともに発生するため、一部の時点の価格に固定せず、全期間を通じた賃料相当額を合算して損害額を算出することが合理的であると解される。
結論
不法占有による損害賠償額は、全占有期間における各時点の賃料相当額を基準として算定されるべきであり、原審の判断に法令解釈の誤りはない。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(オ)822 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律に基づき、上告理由が法令の解釈に関する重要な主張を含むものと認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人らが最高裁判所に対して上告を提起したが、その上告理由の具体的内容については判決文からは不明である。 第2 問題の…
土地や建物の不法占有事案において、損害賠償額(賃料相当損害金)を主張立証する際の基本的枠組みとなる。司法試験においては、不法行為の損害算定の一般論として、継続的侵害には各時点の時価を反映させるべきであることを示す際に有用である。
事件番号: 昭和27(オ)163 / 裁判年月日: 昭和29年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で追加された請求が、元の請求と請求原因を全く異にし、かつ元の請求の当否を判断する先決関係にもない場合、それは訴の変更に該当する。その変更が訴訟手続を遅延させると認められるときは、裁判所はこれを許容しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は第一審において、対象土地の所有権確認および移転登…
事件番号: 昭和37(オ)970 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
山林の所有権取得時効の基礎要件たる占有は、時効援用者の単独占有でなければならない。
事件番号: 昭和26(オ)650 / 裁判年月日: 昭和27年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条違反を主張していても、その実質が原審の証拠判断や事実認定を非難するにすぎない場合は、正当な違憲の主張には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の証拠判断および事実認定を不服とし、これが憲法14条(法の下の平等)に違反する旨を主張して上告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容…