判旨
賃貸人が賃借人に対してあらかじめ一般的な転貸の承諾を与えていた場合、その承諾の効果は、後に賃貸不動産の所有権を取得して賃貸人の地位を承継した新所有者にも及ぶ。
問題の所在(論点)
前賃貸人が賃借人に対して与えた「一般的な転貸の承諾」の効力は、不動産の譲渡に伴い賃貸人の地位を承継した新所有者に対しても及ぶか(民法612条1項の承諾の承継)。
規範
賃貸人があらかじめ包括的な転貸の承諾を与えた場合、その承諾の効果は賃貸人の地位の承継に伴い、承継人である新所有者にも当然に及ぶ。
重要事実
家屋の所有者であり賃貸人であったDは、賃借人(被上告人)に対し、家屋の一部について他に間貸ししてもよいという一般的な転貸の承諾を与えていた。その後、当該家屋の所有権がDから上告人へと移転し、上告人が賃貸人の地位を承継した。上告人は、自身が与えた承諾ではないとして、転貸の効力を争った。
あてはめ
本件において、前賃貸人Dは被上告人に対し、特定の相手方に限定されない一般的な転貸の承諾を与えている。賃貸人の地位の承継が生じた場合、新賃貸人は旧賃貸人の権利義務を包括的に承継するものである。したがって、旧賃貸人が既になした転貸の承諾という賃貸借契約上の地位に付随する効果も、そのまま新所有者である上告人に承継されると解するのが相当である。
結論
前賃貸人による一般的な転貸の承諾の効果は新所有者にも及ぶため、被上告人による転貸は適法であり、上告人は無断転貸を理由とした解除等を行うことはできない。
実務上の射程
賃貸人の地位の承継に関する基本判例であり、特段の事情がない限り、前賃貸人の承諾の効力が新所有者に及ぶことを肯定する。答案上は、賃貸人交代後の無断転貸解除の可否が問われる場面で、承諾の有無や効力の範囲を認定する際の根拠として活用できる。なお、承諾が特定の転借人に限定されている場合でも、同様の論理が働き得るが、本判決は「一般的な承諾」を前提としている点に留意する。
事件番号: 昭和27(オ)354 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
賃貸人が無断転貸を理由として家屋の賃貸借を解除した後、転借人に対しあらたな賃貸等の事由により引きつづきその家屋の使用を許しても、解除の効力に影響はない。