建物賃借人は、転貸承諾の特約を賃貸建物の強制競売による競落人に対抗できる(昭和三六年(オ)第四四九号同三八年一月一八日第二小法廷判決、民集一七巻一号一二頁参照)。
転貸承諾の特約は賃貸物件の強制競売による競落人に対抗できるか。
借家法1条1項,民法612条
判旨
賃借人が建物の新所有者に対して借家権を対抗できる場合、旧賃貸人が与えた転貸の承諾という特約も当然に新所有者へ承継される。この理は、建物所有権の移転原因が売買であるか強制競売であるかを問わず適用される。
問題の所在(論点)
不動産の競落人が賃貸人としての地位を承継した場合、旧所有者が競売申立登記前になした「転貸の承諾」という特約は、競落人に対抗できるか。移転原因が強制競売であることで特段の差異が生じるかが問題となる。
規範
借地借家法(旧借家法)の下で借家権を対抗できる場合、賃貸人と賃借人の間に存した建物利用に関する全法律関係は、原則として法律上当然に新所有者へ移行する。これには賃貸借契約の内容を構成する特約も含まれるため、賃貸人があらかじめ与えた「転貸の承諾」も、賃貸人としての地位の承継に伴い新所有者に引き継がれる。
重要事実
建物所有者Dは、賃借人E社に対し、後に設立される予定の被上告会社への転貸をあらかじめ承諾していた。その後、本件建物は強制競売に付され、上告人がこれを競落して所有権を取得した。賃借人E社は建物引渡しを受けていたため対抗力を備えていたが、競落人である上告人は、Dがなした事前の転貸承諾は自身を拘束しないとして、転借人らに対し建物の明け渡しを求めた。
あてはめ
本件では、Dが賃借人E社に対し、将来設立される被上告会社への転貸を承諾していた事実は証拠上認められ、これは停止条件付承諾ではなく単純な承諾である。賃借人が対抗力を備えている以上、建物利用のための法律関係は新所有者に当然に移行する。この法理は売買による移転と強制競売による移転で異なる結論を導くべき理由はない。したがって、旧所有者Dによる転貸承諾は、賃貸人の地位と共に上告人に承継されるといえる。
結論
賃借人および転借人は、新所有者(競落人)に対しても旧所有者による転貸承諾を対抗できる。したがって、上告人による明け渡し請求は認められない。
実務上の射程
賃貸人の地位の承継に伴う権利義務の範囲に関する重要判例である。答案上は、賃借人が対抗力を備えていることを前提に、合意解除などの例外を除き、特約(転貸承諾、更新料合意、修繕義務の特則等)も原則として承継されることを論証する際に活用する。競売事案であっても通常の売買と同様に扱う点に注意が必要である。
事件番号: 昭和27(オ)484 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人が賃借人に対してあらかじめ一般的な転貸の承諾を与えていた場合、その承諾の効果は、後に賃貸不動産の所有権を取得して賃貸人の地位を承継した新所有者にも及ぶ。 第1 事案の概要:家屋の所有者であり賃貸人であったDは、賃借人(被上告人)に対し、家屋の一部について他に間貸ししてもよいという一般的な転貸…