本件のように昭和二五年五月二〇日の貸付の日から同月末日の弁済期日後である同年九月末日までの約定利息並びにこれに相当する損害金を任意に支払つたような場合には、たとい右約定利率が利息制限法二条所定の制限利率を超えるときでも、民法七〇八条の趣旨により、その制限超過額を元本に充当することはできないものと解するを正当とする。(大正一〇年三月五日大審院判決、民録二七巻四八七頁以下参照)
利息制限の制限法を超える約定利息損害金の任意支払と超過金額の元本への充当
判旨
利息制限法所定の制限利率を超える約定利息または損害金を任意に支払った場合、民法708条(不法原因給付)の趣旨により、その制限超過額を元本に充当することはできない。
問題の所在(論点)
利息制限法の制限を超える利息または損害金を債務者が任意に支払った場合、その超過部分を元本に充当することができるか。
規範
金銭消費貸借契約において、制限超過の利息または遅延損害金が任意に支払われた場合、民法708条の趣旨に照らし、当該支払を有効なものとして扱い、その制限超過部分を元本に充当することは認められない。
重要事実
上告人らは、昭和25年5月20日に金銭の貸し付けを受け、同年5月末日の弁済期日後である同年9月末日までの期間について、約定利息およびこれに相当する損害金を任意に支払った。しかし、当該約定利率は利息制限法2条所定の制限利率を超えるものであった。そこで、上告人らはこの制限超過額を元本に充当すべきであると主張して争った。
あてはめ
本件では、債務者が弁済期経過後も含む一定期間の利息および損害金を「任意に」支払っている。この行為は、民法708条の趣旨、すなわち自ら不法な原因に基づいて給付をした者はその返還を請求できないという理に準じて評価される。したがって、利息制限法違反という公序良俗に反する側面があるとしても、一度任意に支払われた以上、その金額を改めて元本に充当し直すという遡及的な調整は認められないと解される。
結論
制限超過の利息等を任意に支払った場合、その超過額を元本に充当することはできない。
実務上の射程
本判決(最判昭29.1.22)は、後に大法廷判決(最判昭39.11.18)によって変更されており、現在は「制限超過額は当然に元本に充当される」のが実務上の確立した規範である。そのため、答案作成においては、本判決は「かつての判例」として、現在の判例理論に至るまでの歴史的経緯や、反対説の論拠として言及するに留めるべきである。
事件番号: 昭和38(オ)70 / 裁判年月日: 昭和40年8月17日 / 結論: その他
債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第四九一条により、残存元本に充当されるものと解すべきである。