一 控訴裁判所は、第一審裁判所の訴訟手続に違法がある場合、事件を差し戻すか否かを自由に裁量することができる。 二 上告裁判所は、第一審の訴訟手続に違法があっても、控訴裁判所が第二審として審理を尽して本案の判決をした場合には、その判決を破棄する必要はない。
一 第一審の訴訟手続違背と控訴審における差戻の要否 二 第一審の訴訟手続違背と第二審判決破棄の要否
判旨
第一審の訴訟手続に違法がある場合でも、当該手続が「無に等しい」ものでない限り、控訴審は裁量により自ら審理・判決をすることができ、それにより手続上の瑕疵は補正される。
問題の所在(論点)
第一審の訴訟手続に違法がある場合(例えば送達や期日の実施態様に瑕疵がある場合)、控訴裁判所は必ず事件を第一審に差し戻さなければならないか。また、控訴審において十分な審理が行われた場合、第一審の瑕疵は補正されるか。
規範
控訴裁判所は、第一審の訴訟手続に違法があった場合でも、特に明文の規定がある場合を除き、必ずしも事件を差し戻す必要はない。第一審の手続が「無に等しい」ものではなく、審級維持の必要性が認められない場合には、控訴裁判所はその裁量により自ら審理を続行して判決をすることができる。この場合、控訴審で十分な審理が尽くされれば、手続上の瑕疵は補正され、上告審において第一審の違法を理由に判決を破棄すべきではない。これは、当事者の訴訟上の利益が実質的に保護されている以上、破棄差し戻しをすることは訴訟経済に反するからである。
重要事実
被告(上告人)に対し、訴状及び第一回口頭弁論期日の呼出状が送達されたが、被告はこれらを裁判所に返送し、第一回及び第二回期日に出頭しなかった。第一審は被告不出頭のまま原告(被上告人)本人の尋問等を行い、原告勝訴の判決を言い渡した。被告はこれを不服として控訴し、控訴審においては被告代理人が出頭して証拠調べや反論等の十分な攻撃防御を尽くしたが、控訴審も第一審と同様の事実を認定し本案判決を維持した。被告は、第一審の手続に違法があるとして差し戻しを求め上告した。
あてはめ
本件における第一審の手続経過(送達、期日の指定、原告本人尋問、判決言い渡し)に照らせば、第一審の訴訟手続は「無に等しい」とまではいえない。また、控訴審において当事者双方が代理人を選任し、多数の書証の提出や証人尋問、本人供述の援用等を行い、十分な審理が尽くされている。このような状況下では、当事者の訴訟上の利益は実質的に保護されており、改めて第一審からやり直す実益はない。したがって、仮に第一審の手続に違法があったとしても、控訴審での審理によりその違法は補正されたと解される。
結論
第一審の手続に違法があっても、控訴審において自ら審理を尽くして判決をすることは妨げられず、その瑕疵は補正されるため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
第一審の手続違法を理由とする差戻判決(民訴法308条1項)の要否に関する基準を示す。第一審の手続が全く機能していない等の極端な場合を除き、控訴審の裁量による自力解決を認め、訴訟経済を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)17 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において被上告人が最初の口頭弁論期日に不出頭であったとしても、民事訴訟法上の規定に基づき答弁書の記載事項が陳述とみなされれば、弁論を経ない違法な判決とはならない。 第1 事案の概要:控訴人である上告人らが提起した控訴審において、被控訴人(被上告人)は適法な呼出しを受けたものの、最初に行われる…