判旨
第一審の裁判長が原審(控訴審)の判決言渡手続のみに関与することは、裁判官の除斥事由に当たらず、適法である。
問題の所在(論点)
第一審の裁判に関与した裁判官が、控訴審において判決の言渡手続のみに関与することが、民事訴訟法上の除斥事由(旧民訴法35条6号、現行民訴法23条1項6号参照)に該当し、違法となるか。
規範
裁判官が「事件につき前審の裁判...に関与したとき」に該当し除斥されるのは、裁判の公正を確保するため、前の審級の判断に拘束されるおそれがある場合を指す。単なる形式的な言渡手続への関与はこれに含まれない。
重要事実
第一審の裁判長を務めた裁判官が、その後の控訴審において、判決の言渡手続にのみ関与した。上告人は、これが裁判官の除斥事由に該当し、手続が違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件裁判官は第一審の裁判長であったが、控訴審においては「判決言渡手続に関与しているだけ」である。言渡手続は既に確定した判決内容を外部に公表する形式的な行為に過ぎず、実質的な裁判の審理や判断に影響を及ぼすものではない。したがって、公正な裁判を妨げるおそれはないといえる。
結論
本件手続に違法はなく、上告は棄却される。第一審の裁判官が控訴審の判決言渡しに関与しても、除斥の対象とはならない。
実務上の射程
裁判官の除斥事由における「前審の裁判への関与」の限界を示す。実質的な審理・判断に関与しない形式的な手続(言渡し等)であれば、前審の裁判官が関与しても違法とはならないという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)18 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
一 控訴裁判所は、第一審裁判所の訴訟手続に違法がある場合、事件を差し戻すか否かを自由に裁量することができる。 二 上告裁判所は、第一審の訴訟手続に違法があっても、控訴裁判所が第二審として審理を尽して本案の判決をした場合には、その判決を破棄する必要はない。