第一審における弁論更新手続前の口頭弁論にのみ関与した裁判官が、その後控訴審の口頭弁論に関与し判決をしたからといって、民訴法第三五条六号にいわゆる前審の裁判に関与したものにはあたらない。
第一審における弁論更新手続前の口頭弁論にのみ関与した裁判官がその後控訴審の口頭弁論に関与し判決した場合と民訴法第三五条六号の適用。
判旨
第一審で弁論更新手続がなされた後、更新前の口頭弁論に関与した裁判官が、第一審判決に関与することなく控訴審の口頭弁論及び判決に関与しても、民訴法第23条(旧35条)6号の除斥事由には当たらない。
問題の所在(論点)
第一審で弁論更新前に関与したが第一審判決には関与していない裁判官が、控訴審の裁判に関与することは、民事訴訟法第23条第1項第6号に定める「裁判官が事件につき前審の裁判……に関与したとき」に該当し、除斥の対象となるか。
規範
民事訴訟法第23条第1項第6号(旧35条6号)にいう「前審の裁判に関与した」とは、下級審の裁判に関与した裁判官が、その裁判に対する上訴審の裁判に関与することを指す。裁判官が第一審の口頭弁論に関与した場合であっても、その後に弁論更新の手続がなされ、当該裁判官が当該第一審の終局判決に関与していないのであれば、その後の控訴審において当該事件の裁判に関与することは同号の除斥事由に該当しない。
重要事実
第一審の口頭弁論に関与した裁判官が、第一審において弁論の更新手続がなされた後、第一審の判決には関与しなかった。その後、当該事件の控訴審において、同裁判官が口頭弁論に関与し判決を行った。これに対し、上告人は当該裁判官の関与が除斥事由(旧35条6号)に該当するとして、判決の違法を主張した。また、上告人は撤回された書証や、適法な証拠申出がなされていない書類を資料に供しなかった点の違法等も主張した。
あてはめ
本件において、第一審では適法に弁論更新の手続がなされており、当該裁判官はその後の第一審口頭弁論および判決に関与していない。除斥制度の趣旨は裁判の公正を確保し、予断を排除することにあるが、第一審の判断そのものに関与していない以上、その上訴審に関与しても前審の判断を維持しようとする心理的拘束が生じるおそれはなく、「前審の裁判に関与した」とはいえない。したがって、同裁判官が控訴審で判決に関与したことに違法はない。また、撤回された書証や、証拠申出手続がなされていない書類については、裁判所が判断資料に供しないのは当然であり、審理不尽等の違法も認められない。
結論
第一審判決に関与していない裁判官が控訴審に関与しても除斥事由には該当しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判官の除斥に関する基本判例である。実務上、弁論更新によって第一審の裁判(判決)に直接関与しなくなった裁判官は、その事件の上訴審を担当することが許容される。答案作成上は、除斥の対象が「前審の『裁判(判決)』への関与」である点を明示する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和27(オ)1077 / 裁判年月日: 昭和29年4月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の裁判長が原審(控訴審)の判決言渡手続のみに関与することは、裁判官の除斥事由に当たらず、適法である。 第1 事案の概要:第一審の裁判長を務めた裁判官が、その後の控訴審において、判決の言渡手続にのみ関与した。上告人は、これが裁判官の除斥事由に該当し、手続が違法であると主張して上告した。 第2 …
事件番号: 昭和30(オ)668 / 裁判年月日: 昭和35年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の裁判長として口頭弁論や証拠調べに関与した裁判官であっても、第一審判決の評決に関与していない場合には、民事訴訟法上の除斥原因である「前に裁判官として事件につき裁判に関与したとき」には該当しない。 第1 事案の概要:本件の上告理由第一点において、原審(控訴審)の裁判長Dは、本件第一審において1…