判旨
第一審の裁判長として口頭弁論や証拠調べに関与した裁判官であっても、第一審判決の評決に関与していない場合には、民事訴訟法上の除斥原因である「前に裁判官として事件につき裁判に関与したとき」には該当しない。
問題の所在(論点)
第一審で口頭弁論を主宰し、証拠調べを実施した裁判官が、当該第一審の終局判決の評決に関与しなかった場合、その後の控訴審において職務の執行を行うことは、民事訴訟法23条1項6号に規定する除斥原因(前に裁判官として事件につき裁判に関与したとき)に該当するか。
規範
民事訴訟法23条1項6号(旧35条6号)にいう「前に裁判官として事件につき裁判に関与したとき」とは、下級審の裁判に関与した裁判官が、後の審級の裁判において職務の執行から除斥されることを意味する。ここでいう裁判への「関与」とは、単なる審理への立会いではなく、当該下級審における終局判決の評決(裁判の成立過程)に直接関与したことを指すと解される。
重要事実
本件の上告理由第一点において、原審(控訴審)の裁判長Dは、本件第一審において11回にわたり裁判長として口頭弁論に列席していた。Dは、当事者の陳述や証拠の申出を聴取し、さらに証人尋問その他の証拠調べを実施していた。しかし、Dは第一審判決の評決には関与していなかった。上告人は、このような裁判官が原審の職務を行うことは除斥原因に該当すると主張して上告した。
あてはめ
本件裁判官Dは、第一審において裁判長として口頭弁論を主宰し、証拠調べ等の中心的な審理手続に関与している。しかし、除斥制度の趣旨は、前審に関与した裁判官が予断を持って後の審級に臨むことを防止し、審級の利益を保障することにある。そのため、単に審理手続に関与しただけでは足りず、前審の判断そのものである「評決」に関与した場合に限定されるべきである。Dは第一審の評決に関与していないため、前審の判断を確定させた当事者とはいえず、控訴審での職務執行が除斥されるべき「裁判に関与した」者には当たらないといえる。
結論
本件裁判官は、第一審判決の評決に関与していない以上、民訴法23条1項6号の除斥原因には該当しない。したがって、原審の職務執行に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、審級の利益を確保するための「除斥」の対象は、前審の『終局判決』に関わった者に限定される。口頭弁論を何度担当していても、判決に関与していなければ後の審級での担当が可能であるという明確な基準を示すものである。司法試験においては、民事訴訟法上の除斥・忌避の論点が出題された際、条文上の『裁判に関与』の意味を限定的に解釈する根拠として活用できる。
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