調停に関与した裁判官は、その後の訴訟事件の判決に関与することを妨げない。
調停関与と除斥原因
民訴法35条6号,民訴法395条1項2号
判旨
民事訴訟法23条1項6号にいう「前審」とは、当該事件の直接又は間接の下級審を指すものであり、当該事件に関与した調停手続は「前審」に含まれない。
問題の所在(論点)
裁判官が本案訴訟に先立つ調停手続に関与した場合、民事訴訟法23条1項6号(旧35条6号)に規定される除斥事由としての「裁判官が事件について前審の裁判に関与したとき」に該当するか。
規範
民事訴訟法23条1項6号(旧35条6号)の除斥事由である「前審の裁判」における「前審」とは、当該事件の直接又は間接の下級審を指す。したがって、裁判官が当該事件に関係する調停手続に関与していたとしても、それは「前審の裁判」には当たらない。
重要事実
上告人は、第一審判決に関与した裁判官が、本案訴訟に先立って行われ不調に終わった当該事件に関連する調停手続に関与していたことを理由に、民事訴訟法上の除斥事由(前審関与)に該当し違法であると主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和30(オ)668 / 裁判年月日: 昭和35年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の裁判長として口頭弁論や証拠調べに関与した裁判官であっても、第一審判決の評決に関与していない場合には、民事訴訟法上の除斥原因である「前に裁判官として事件につき裁判に関与したとき」には該当しない。 第1 事案の概要:本件の上告理由第一点において、原審(控訴審)の裁判長Dは、本件第一審において1…
民事訴訟法における除斥制度の趣旨は、裁判の公正を確保することにあるが、同号の「前審」は審級制の観点から下級審の裁判を指すと解される。本件において、裁判官が関与したのは不調に終わった調停手続であり、これは当該事件の直接又は間接の下級審としての判断を行ったものではない。したがって、当該調停手続は「前審」には該当せず、当該裁判官が第一審判決に関与したことに違法はないと評価される。
結論
調停手続は「前審」に含まれないため、これに関与した裁判官が後の本案訴訟に関与しても除斥事由には該当しない。上告棄却。
実務上の射程
除斥事由(23条1項6号)の「前審」の意義を限定的に解釈する際の中核的判例である。民事訴訟のみならず刑事訴訟(刑訴法20条7号)の類推適用場面でも参照される。実務上、調停から訴訟へ移行した際に同一の裁判官が担当しても直ちに除斥とはならないことを示すものだが、忌避の是非は別途検討の余地がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和28(オ)1239 / 裁判年月日: 昭和29年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、記録上唯一の証拠とは認められない証拠申請の却下等、単なる訴訟法違反の主張は、民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当しないと判示しました。 第1 事案の概要:上告人が、原審における証拠申請の取り扱い等について訴訟法違反を主張して上告を提起した事案。なお、当該証拠申請は…